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出血なく前立腺肥大を解消する高齢者に適した「水蒸気治療」

服薬治療では様々な排尿障害が起きてしまうことも(イラスト/いかわやすとし)

前立腺肥大の投薬治療では様々な排尿障害が起きてしまうことも(イラスト/いかわやすとし)

 高齢化に伴い、前立腺肥大症患者が増加している。軽症のうちは服薬治療で対応する。重症になった場合は前立腺を内側から切除する手術を行なうが、手術困難な患者には9月から尿道より内視鏡を入れ、水蒸気を噴霧し、前立腺組織を壊死させる治療が保険収載された。壊死した組織は約1か月で体内に吸収される。手術時間は10~15分と短く、尿道粘膜への影響が少ない。

 前立腺肥大症の治療はまず、服薬で行なわれる。ただし、長期間服用していると次第に効果が減り、様々な排尿障害が起きてしまう。

 日常生活にも不自由を感じる場合には手術が選択されることもある。従来の手術は前立腺を内側から切除するので出血が多く、合併症のリスクも少なくない。現在はレーザーも導入されているが、患者の負担は大きいままだ。

 そこで手術対応の患者に局所麻酔でも治療可能な水蒸気を利用した、経尿道的水蒸気治療が保険収載された。日本大学板橋病院泌尿器科教授の高橋悟病院長に聞く。

「この治療はすでに世界20か国で実施されており、その治療データを基に保険収載されました。具体的には水蒸気を前立腺に噴霧、組織を壊死させ、その後体内に吸収されることで尿道を確保し、排尿を改善するという治療です」

 この治療では全身麻酔、または局所麻酔を使い、尿道から内視鏡を挿入する。そして、前立腺の組織に向けて針を刺し、周囲組織の直径1センチが70℃になるよう103℃の水蒸気を9秒間噴霧して細胞を壊死させる。

 前立腺の大きさにもよるが、通常は左右2か所、合計4か所に針を刺して水蒸気を噴霧する。手術時間は10~15分と短く、術後3日で留置したカテーテルを抜き、約1か月で壊死した組織が血管から体内に吸収され、約3か月で排尿障害が解消し、射精障害も起こりにくい。

 実は、前立腺肥大症の温熱治療は1980年代にも実施されている。しかし、尿道に直接レーザーやラジオ波をあてる方式だったため、尿道粘膜に火傷などの傷害や排尿痛、頻尿などが起こった。他にも術後にスラッフィングという壊死した組織が崩れて尿道を塞ぎ、排尿ができない合併症が起こることもあり、現在はほとんど実施されていない。

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