防衛増税へ向かって動き出したことで、自民党内からも強い反発を受けた岸田文雄・首相。12月15日自民党税制調査会では、具体的な増税時期が決めず、事実上の先送りで妥協した形だ。
増税批判を浴びて満身創痍の岸田首相の姿をじっと凝視しているのが菅義偉・前首相だ。いまや「旧安倍支持勢力の盟主」の立場にある菅氏は、「政権運営をした者として、あまり批判めいたことは言うべきじゃない」と岸田批判を封印しているが、岸田サイドからの副総理就任の打診を断わり続けているとされ、「菅さんは根っからの増税反対論者。党内の増税批判の背後には菅さんの存在がある」(増税反対派の無派閥議員)と、政局の“陰の主役”の1人と見られている。
その菅氏の周囲では、旧統一教会追及で存在感を発揮した河野太郎・消費者担当相が「岸田が倒れたら次はオレ」とばかりに出番をうかがっており、二階俊博・元幹事長が率いる二階派は菅グループと「反主流派連合」を形成して岸田首相がいよいよになればいつでも襲いかかる準備を整えている。
岸田首相は政権を支えるはずの自民党執行部にも“見えざる敵”を抱えている。
その1人が茂木敏充・幹事長だ。党内の増税批判に表向きは「決まったらその方針に従っていく。これが慣例だ」と釘をさしたものの、身を挺して首相を守ろうとしたことはない。政治評論家の有馬晴海氏は茂木氏は“タナボタ戦術”とみる。
「茂木氏は幹事長として総理を守る立場だが、能力では岸田首相に勝っているとの自負があります。だから岸田首相が何らかのことで躓けば、その軌道修正をする形で、岸田首相を支えてきた自分が取って代わるというイメージを持っていると思います」
茂木氏が臨時国会終盤に日本維新の会の幹部たちと会合を開いたのも、「岸田政権の安定のためではなく、茂木政権ができたときの準備」(自民党閣僚経験者)との見方がもっぱらなのだ。