「移植した眼内レンズは生涯劣化しません。しかし、術後何年か経過すると水晶体を包む嚢と眼内レンズの隙間に水晶体上皮細胞が入り込み、すりガラス状の濁りとなって視力低下をきたすことがあります。この状態を後発白内障といいます。眼内レンズの素材や形状の他に、手術法によっても発生頻度は変わってきます」(赤星名誉院長)
最近の眼内レンズは主にアクリル素材で作られているが、親水性のアクリルは疎水性に比べ、後発白内障の発症が3倍以上も多い。強度の近視で水晶体が大きな眼は、これを包む嚢も大きいため、眼内レンズと嚢の間に細胞が侵入しやすくなる。他にも若い人ほど細胞の増殖力が高いために後発白内障の発症が早い。多焦点眼内レンズが濁り出すと手元の視力から低下し、徐々に遠方が見えにくくなる。老眼が戻ったのかと思うかもしれないが、後発白内障を疑ってみたほうがよい。
治療はYAGレーザーで眼内レンズの裏側の嚢に小さな穴をあける。3分ほどで処置が済む。眼球にメスを入れないので、術後の生活上の制限はなく、いったん後嚢に穴があくと水晶体上皮細胞は、それ以上は中心部に入ることができないので再発がない。
白内障手術直後に比べて視力が低下していると感じたら、まずは眼科での検査を。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2023年1月1・6日号