ゴルフの実力は両者拮抗していたが、負けず嫌いの円楽さんはハンデをもらい、最終的には自分が上にならないと気がすまなかったという。
遊びのシーンだけでなく、本業の落語においても面倒見のよさは発揮され、2007年からは「博多・天神落語まつり」をプロデュース。東西の大物落語家が登場する大イベントに作り上げ、2019年からは北海道で「さっぽろ落語まつり」もプロデュースして成功させている。そんなイベントのときは、「マネジャーさんたちも楽しんでほしい」と声をかけるなど、スタッフたちへの気配りも忘れない人だった。
2018年9月、初期の肺がんであることを公表、2019年7月に脳腫瘍、2022年1月には脳梗塞となる。同年5月に退院して『笑点』の楽屋に訪れたときは車いすで弱々しい声だったが、約1か月後には声がしっかりしてきて、回復の兆しが見られたと、小遊三は振り返る。
「8月には高座に復帰し、最後になった20日の演目は『目薬』。楽さんの高座ではあまり聴いたことなかったから『珍しいな』という意味で、『目薬か』と声をかけたんだけど、嫌みだと思われていたら、心残りだね」
突然の訃報を受け、10月2日に弔問すると、楽屋で機嫌がいいときの顔をしていたという。
「40年ほどの間、笑点でも、二人会でも、ゴルフでも、ずっと一緒だった。これが日常だったから、普通の感情じゃないですよ。いまになってみると、ゆっくり話がしたかったなあ。昔の思い出話ができるのは、彼しかいませんから」
【プロフィール】
三遊亭小遊三/落語家。落語芸術協会所属。出囃子(でばやし)は「ボタンとリボン」。1月9日「三遊亭小遊三・春風亭昇太二人会 新春特選落語会」(東京・なかのZERO大ホール)に出演予定。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2023年1月5・12日号