番組開始当初は“朝からバラエティ”に批判の声が上がりながらも、いまや毎日のようにSNSで話題となるようになった TBS『ラヴィット!』。MCの麒麟・川島明がその活躍を受けて『LINE NEWS AWARD 2022』の芸人・タレント部門を受賞するなど、間違いなく2022年を代表する“話題の番組”だったと言える。何かと暗いニュースが多かったコロナ禍の中であっても、「日本で一番明るい朝番組」を掲げた同番組のプロデューサー・辻有一氏に、ニュース番組が定番とされる朝の時間帯で、バラエティ番組をやり抜いてきた理由を訊いた(一部敬称略)。聞き手は、テレビっ子のライターで『タモリ学』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第2回──。
「勝算」なき勝負へ
テレビという媒体をベースに様々な挑戦をしている番組や作り手に焦点をあてる新連載「テレビの冒険者たち」の最初の取材だと聞き「そっちのほうが冒険ですよ!」と笑うのが、『ラヴィット!』(TBS)のプロデューサー・辻有一である。
2021年3月29日から麒麟・川島明をMCに据えた『ラヴィット!』は、ワイドショー系番組が全盛の朝の時間帯で、暗いニュースやスキャンダルはもちろん、明るい芸能・スポーツニュースすら扱わず、お笑い色の強い情報バラエティを月~金曜日の帯で放送し続け、テレビの平日朝の風景を変えた。間違いなく2022年を代表する番組のひとつだ。
けれど、番組開始当初は、批判的な声が相次いだ。
「悔しいの一言でした。ものすごく会社からの期待を背負って始まったんですけど、期待を大きく裏切るような成績でした。ネット上の評価を見ても酷評の嵐でしたし、数字を見た上での社内の評価もすごく低かったんで、自分の力不足を痛感しましたね」
そもそも『ラヴィット!』は、辻とCP(チーフプロデューサー)の小林弘典が、「ニュース・ワイドショーはやらない朝の帯番組を作ってくれ」という会社からの発注を受けて立ち上げた番組だ。その発注を聞いた時、辻は「大胆なことをするなぁ」と率直に思ったという。辻は編成に配属されていた経験もあったことから、TBSの朝番組が低迷しているという状況もよくわかっていた。だからなんらかの手を打とうとしているのだとは感じていたが、それにしても思い切ったことをするなと思った。「勝算」はあったのだろうか。
「いや、まったくなかったです。ただそれまでもTBSはFコア(※「ファミリーコア」の略称。男女49歳以下の個人視聴率を指す)が最下位だったんで勝負に出るしかないという意識しかなかったです。あと、ここは大事なことなんですけど、今も視聴率的には勝ってるわけでもないですから」