目的の列車に乗るためにホームを探し回ることになったり、乗り換えをミスって逆方向の列車に乗ってしまこともあるだろう。そうしたアクシデントも、「いい経験として活かせるようになる」と船井さんは言う。
「今回の旅は事前にどこへ行き、どういった行動をするのかといった計画書を提出してもらっています。しかし、会社から旅の内容について口出しをしていません。ただ、最低限のルールとして、18きっぷを支給したほかに1日1万円の旅費で飲食費や宿泊費をやりくりすることになっています。また、1日10人に話しかけることも課しています。そうした旅先での経験を通して、自分で物事を計画する力や決める力、問題が起きた時に危機を回避する能力などを養うことを期待しています」(同)
18きっぷを手に列車に乗り込んだ22人の新入社員たちは、事前に計画した目的地へと旅立っていった。新入社員たちは安否確認などの意味も含めて、インスタグラムに旅先の写真をあげることになっている。そのインスタグラムを見ると、栃木県まで行った猛者や四国で滝行を体験している新入社員もいた。
近年、鉄道のきっぷや航空券、ホテルの宿泊予約はネットで手配できるようになった。これらにより、旅のハードルは大きく下がった。また、旅先で時刻表検索やグーグルストリートビューなどを用いることもできる。スマホを使えば、その場で立ち尽くすような困り事に直面することはない。
このような旅は、一見すると単なる社員旅行の新バージョンなのでは?と思うかもしれない。しかし、近年になって旅を通じた何かを体験することや知見を得る旅は、旅育として注目されるようになっている。
旅では想定外のハプニングがつきものだ。「かわいい子には旅をさせよ」とことわざがあるように、旅を通じていろいろと学ぶことはたくさんある。旅をプランニングする行為は、社会人として事業計画を立てるスキルを磨くことにもつながるだろう。
18きっぷの旅とまではいかなくても、山陰パナソニックが始めた研修のように、旅を取り入れるユニークな企業が今後は増えるのかもしれない。