JR全線の普通列車、快速列車が1万2050円で1日乗り放題を5回利用できる「青春18きっぷ」は、前身の国鉄時代に始まった同様のサービスから40年近く続く使用期間限定の切符だ。新幹線や特急では利用できないため、時間に余裕がある学生や、のんびり鉄道旅を楽しみたい人などに根強く支持されている。その「青春18きっぷ」を利用したユニークな新入社員研修について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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「青春18きっぷ」は、JR全線の普通列車が5日間乗り放題になるきっぷだ。18きっぷは乗り鉄にお馴染みの神アイテムといわれるが、一般的に利用されることは少ない。
また、学生が長期休暇に入る春・夏・冬に発売されることや18きっぷという名称から、高校生までもしくは18歳までしか利用できないと誤解されることもある。しかし、18きっぷは年齢・性別を問わず誰でも使用でき、鉄道旅を満喫できる。
近年はLCCや格安の高速バスといった移動手段も日常的になり、18きっぷのメリットは薄れているとも言われる。ほかにも、現役世代はゆっくりと休暇を満喫する時間的な余裕がない。そうした事情から、近年は18きっぷを使った鉄道旅は低調傾向にある。
ところが、そんな青春18きっぷを使った旅を新入社員の研修に取り入れた企業がある。それが島根県出雲市を本社に置く山陰パナソニック株式会社だ。
「青春18きっぷの旅を新入社員研修にした理由は、新入社員の面接時に『卒業から入社時までに、何をしたらいいですか?』という質問が多かったからです。その質問に対し、弊社の社長は『見識を深めるために旅に出たらいいんじゃないか』と答えていました。そうした経緯もあり、18きっぷで旅に出るという新入社員研修を実施することになったのです」と経緯を説明するのは、山陰パナソニック経営管理本部人財戦略部の船井亜由美さんだ。
今回、18きっぷの旅に出た新入社員は22名。業務の都合もあって全員が一斉に旅立つことはできなかったが、12月12日に17人、残る5人が19日に自宅の最寄駅から出発した。
新入社員たちの多くは島根県出身者で、日常の移動にもマイカーを使う。列車に乗った経験も数えるぐらいしかない。なかには、今回の旅が鉄道初体験という新入社員もいた。
計画や決断、危機回避能力の養成を期待
地元の駅なら見慣れた地名がたくさん並んでいるから、多少は迷うことがあっても案内表示板を見て行動できるだろう。だから、それほど難儀することはない。
しかし、島根県から山陰本線に乗り大阪駅や神戸駅、もしくは西へと進み博多駅あたりに到着してからは、数多くの試練が待ち受けている。これらの駅では、多くの路線が乗り入れている。