独特のハスキーボイスでパワフルに歌い上げる1983年のヒット曲『ボヘミアン』で知られる歌手の葛城ユキさんが2022年6月27日、腹膜がんのため亡くなった。
互いに親友と呼び合う歌手のロザンナ(72才)は、葛城さんを「気配りの人」と評す。
2人の出会いは、7年ほど前に夢グループのコンサートに参加した際のこと。ロザンナは個室楽屋だったが、大部屋から聞こえてくる葛城さん、桑江知子(62才)、石井明美(57才)らの楽しそうな笑い声に、疎外感を感じていたという。
「それまで接点がなかったのに、ユキちゃんが突然、『お邪魔してもいいですか』と楽屋を訪ねてくれたんです。ニコニコしながら化粧品を持ってきてくれて、10分ほど話して帰っただけなのにものすごく救われた。とてもかわいくて、優しい人だとわかって、そのときから親友になったんです」(ロザンナ・以下同)
同コンサートでは、チャーターバスで移動しながら、地方ツアーに出かけることも多かった。
「バスの中は、修学旅行に行くような感じで大騒ぎ。ホテルに着けばお酒を持ち込み、『今日はロザンナのバー』、『今日はユキちゃんのクラブボヘミアン、スナックボヘミアン』とか、バンドさんたちも一緒にワイワイやって、すごく楽しかったです」
葛城さんは、寂しそうにしている人を見かけると声をかけずにはいられない、頼れる姉御的存在だった。
「ゆで卵を20個くらい作ってきたり、『昨日、夜なべして米を炊いた!』と言いながらちらし寿司を振る舞ってくれたり。おばあちゃんの口調で笑わせてくれたこともありました。超ムードメーカーでカッコいい。彼女は大体ショートパンツでガシッとしたジャケットが多いけど、私たち女子はプリプリのドレスが多い。
私の衣装を『1回着させて』といって着てみて、『ちょっとどうかしら』ってシナを作ってみたり。『宝塚みたいだね』と言いながら写真を撮ったり……」
写真は必ずその場で確認して気に入らなければすぐに削除し、絶対に残さなかったという。
「だから、残っている写真のユキちゃんは、全部いい顔!」
体調が悪そうなときに「ノッてないじゃない?」と言うと、「そういう日もあるのよ」と返し、すぐに本調子に戻る。
「お酒が好きだったので、周囲からは二日酔いだろうと思われていたのですが、入院する少し前にいきなり、『私ね、息が苦しくて病院に行ったら、肺に水がたまっているって言われて、注射で4本も水を抜かれたのよ』って。驚きました。その状態であんなすごい声を出して、ステージをダイナミックに動いていたなんて……。ありえないですよ」