胆のうがなくても何の問題も起きなかった
赤川:だけど「病気になりたくない」という気持ちはすごくよくわかる。ぼくは毎年必ず人間ドックを受けたうえで血液検査も定期的にしていて家族から「検査が趣味なのね」と笑われています。やっぱり病気は嫌だし、何よりプロとして原稿の締め切りを守らなきゃいけない。
和田:締め切りのある仕事は本当に大変ですよね。ぼくも「数値は気にしない」と言いつつ、検査をまったく受けないわけではない。いま自分の体がどのような状態かを知っておくのは重要なことですし、特に数値だけでなく、血管がどんな状態なのか、個人の置かれた状況がチェックできる「心臓ドック」と「脳ドック」は頼りにしています。
赤川:こまめに検査を受けておいてよかったと思うのは、胆のうがんを早期に発見できたこと。8年くらい前ですが、見つけてすぐに摘出手術をしてもらいました。
和田:その後、体調に変化はありませんか?
赤川:はい。開腹せずに行う腹腔鏡手術だったので翌日から普通に歩けましたし、6日で退院できました。胆のうって、なくなっても大丈夫なんですね。切ってもいいのは盲腸だけだと思っていたので驚きました(笑い)。医師からは「脂っこいものを食べると胸焼けするかも」と言われましたが、それもまったく問題なし。
和田:それはすごくいい医師ですね。がん治療は主治医によって方針が異なり、人によっては切る必要がない部位まで切除してしまうこともある。検査までは熱心なのに、いざがんが見つかるとどう治療するかまでは考えず、病院に丸投げする人が多い。
赤川:日本人の感覚だと、「いまかかっている先生に頼まないと悪いんじゃないか」と思ってセカンドオピニオンに積極的になれないという理由もありそうですよね。
和田:奥ゆかしさ故の遠慮ですね。だけど自分の体は自分で責任を持つしかない。海外では、どういう医師にどんな治療を受けたいか、事前に調べている人が多いので、そこは見習うべきと思います。
(第3回へ続く。第1回から読む)
【プロフィール】
赤川次郎(あかがわ・じろう)/1948年、福岡県生まれ。1976年『幽霊列車』でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、小説家デビュー。ユーモア・ミステリー、サスペンス、恋愛小説と幅広いジャンルで活躍し、1980年に『悪妻に捧げるレクイエム』で角川小説賞、2016年には『東京零年』で吉川英治文学賞を受賞。『三毛猫ホームズの推理』『セーラー服と機関銃』『夢から醒めた夢』など映像化・舞台化作品も多数。累計発行部数は3億3000万部を突破している。
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年、大阪府生まれ。精神科医。東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上高齢者医療の現場に携わる。診療の傍ら、医療や受験など幅広いテーマで執筆を行い、著作『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラーに。
撮影/chihiro.
※女性セブン2023年1月5・12日号