どんなに強くても王者になれるのは一校のみ。箱根駅伝で「3冠」を狙う駒大と「連覇」を目指す青学大。両雄が並び立つことはない。ふたりの指揮官は決戦を前に何を思うのか。
駒大・大八木弘明監督は母校の指導者になって、29年目。箱根駅伝は2000年からの6年間で5度の優勝に輝いている。しかし、2009年以降の制覇は一度のみ。振り返ると、全日本を4連覇して迎えた2015年はV候補の筆頭だった。そこに突如、現れたのが「山の神」を擁したアオガクだ。
原晋監督は就任11年目に箱根を初制覇すると、大学のブランド力を追い風に有望選手を獲得。一気に学生駅伝の“主役”になった。2016年度は駅伝3冠を達成。箱根は2015年からの8年間で6度も制している。
ふたりのキャラは学生時代から大きく異なる。大八木は社会人を経て、24歳で駒大の夜間部に入学。勤労学生として川崎市役所で働きながら競技を続けた。一方の原は高校の先輩が監督を務めていた中京大に進学。パチンコと飲み会に明け暮れた時期もあったという。
大八木は迫力ある見た目と違って、かなり慎重な性格だ。練習メニューの詳細を記事にするのも嫌う。原はチャラさとノリの良さを持ち、中国電力時代は営業マンとして活躍。人を喜ばせることに長けている。サービス精神旺盛で、メディアの人気者になった。
「箱根で何かを成し遂げたいという思いはないんですよ。原晋という男の存在価値を認めてもらいたいという気持ちの方が強かった」
原は自分のことが大好きで仕方ないらしい。指導者としての実績はともに素晴らしいが、意識するポイントは異なる。大八木は、「箱根は通過点」と考えて、エースの育成を大切にしてきた。
「エースが育てば、皆がついていき、チームの方向性が固まる。組織はまっすぐ進んでいきますよ」
その結果、藤田敦史、中村匠吾、西山雄介、田澤廉らが世界へ羽ばたいた。では、原の場合はどうか。