何が長寿につながるのか。これまで世界中で研究されてきた「長寿の条件」に革命をもたらしたのが、米国のルイス・ターマン博士とハワード・S・フリードマン博士による「長寿プロジェクト(The Longevity Project)」だ。
研究が始まったのは今から約100年前の1921年。10歳前後の児童約1500人を対象にした追跡調査は80年間にわたって行なわれ、2011年に結果が公表された。何より画期的だったのは「長寿と性格」の関係を解明したことだ。
東海大学医学部客員教授で医療法人財団百葉の会銀座医院院長補佐の久保明氏が解説する。
「両博士は1500人の性格を丹念に調査し、80年というほぼ一生を通して寿命との関係を追い続けました。世界に例を見ない大規模かつ長期にわたる質の高い研究で、私たちの性格が、栄養や運動以上に健康と寿命に関与することを示しました。それまで何となく信じられてきた通説を覆すに足る科学的な説得力とインパクトを持つ研究です」
長寿プロジェクトは、長生きする性格の特徴を明らかにした。なかでも長寿につながると示されたのが「勤勉性の高い性格」だ。久保氏が語る。
「慎重で粘り強く、細かなところに注意が向き、責任感のある人が長生きするとされました。そうした生真面目タイプはストレスを溜めて短命になると思われていたので、驚きの報告でした。
理由については“勤勉性が高い人は慎重に行動し、自分を危険にさらす事態を避ける”としています。アルコール摂取量や喫煙率が低い。また、様々な場面で堅実な選択をし、健康的な生活習慣を身につけていることも長寿につながっていると考えられます」
研究は早死ににつながる性格も示した。そこでも通説を覆したのは、「陽気で楽観的な性格」が短命要因とされたことだ。明るく朗らかで、ストレスを抱えにくいように思える人がなぜ早死ににつながるのか。
「明るく陽気な人は軽はずみで衝動的な行動をしがちで、気分に流されやすい。危険に対しても無頓着で、生命にかかわる重病でも症状のサインを見落としたり、『多分大丈夫だろう』と自己判断して手遅れになったりするケースが想定される。
また、周囲を楽しませる明るい性格の子供も大人になると大量の飲酒や喫煙など健康を害する乱れた生活を送り、人への気遣いからストレスを溜めやすいと推測されます」