日本で肥満に悩む人々が増え始めたのは、第二次世界大戦後である。終戦直後の食糧不足から一転、高度経済成長にともない「食生活の向上」「便利で楽な交通手段の整備」「体力を使わないデスクワークの増加」と太りやすい環境が整ってしまったのだ。食事制限や運動奨励のダイエット法が続々登場するなか、とくにユニークなメソッドは時代ごとに話題を集めた。
1960年以前は、外見の美しさを求めてのダイエット、エステ、美容整形ブームが戦勝国である欧米で一足早く盛りあがったのち、日本へ到来し始めた。1960年代は、イギリス人モデルのツイッギーが旋風を巻き起こした時代である。すらりとした体型に憧れる日本の女性がダイエットに興味を抱く大きなきっかけとなった。
1970年代は、様々な自宅用フィットネス器具が発売されたのが特徴的だ。ルームランナーやぶら下がり健康器は、コロナ禍で在宅時間が増えた近年、人気が再復活している。
1980年代には、「○○を食べるだけ」という食事系ダイエットが次々と話題になるが、こんにゃく、酢大豆、りんご、パイナップルと、その都度栄養の偏りが指摘され、多くは尻すぼみに終わった。一方、カチンカチン体操やエアロビクスなどの運動系も登場している。
1990年代になると、ダイエットスリッパ、ダンベル体操、やせる石鹸、ココアなど「ダイエットにいい」とテレビで紹介された途端にブームに火が付く一方、寄生虫を利用した手法など過激なダイエット法もチラホラ出現した。
2000年代になると「ビリーズ・ブートキャンプ」が大ブームに。アメリカ軍の基礎訓練をベースにビリー・ブランクスが考案した短期間集中型エクササイズのDVD販売のためのCMも評判となり、忘年会などで真似をする人が相次いだ。2007年12月に任天堂から健康を管理するゲームソフト「Wii Fit」が発売されると、約1か月でミリオンセラーを達成した。
2010年代は、ただ体重を減らすだけで終わらない、健康や長寿を意識したダイエット法が本流となる。計量器メーカー「タニタ」の社員食堂で出されている料理が低カロリーで満腹になると話題になり、2012年「タニタ食堂」は新語流行語大賞にノミネートされた。また、カーヴィーダンス、TRFのダンス・エクササイズ、ライザップなど運動系ダイエットの台頭も目覚ましい年代だ。
2020年以降は、コロナ禍により、自宅内で完結するダイエット法の人気が上昇。 「1日○分だけ」「1週間で結果が出る」といった効率性がさらに重要視されていく。オートミールも人気化した。
テレビなどマスメディアからのインパクトある情報は飽和状態になり、あいまいな理由付けのダイエット法は早々に淘汰されるようになったようだ。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号