人気映画『男はつらいよ』シリーズで、寅さんの妹・さくらの夫、博を演じていた俳優の前田吟さん(78)。年末に行われたNEWSポストセブンのインタビューで、2021年8月に50年連れ添った妻を病気で亡くした後、2022年6月に歌手の箱崎幸子さんと再婚したことを明かして、世間を驚かせた。俳優として半世紀以上の活躍を続ける前田さんに、仕事への思いと渥美清さん、倍賞千恵子さん、佐藤蛾次郎さんら共演者との秘話を聞いた。【前後編の後編。前編から読む】
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18歳で劇団俳優座の養成所に入り、1964年、ドラマ『沖縄の子』(NET=現・テレビ朝日系)でデビュー。1969年に公開された映画『男はつらいよ』が国民的人気シリーズとなり、前田さんの人気は不動のものとなった。
「最初は1作だけの予定で、打ち上げのときに山田洋次監督から『次は「砂の器」を撮るから、吟さん、刑事役をお願いしたいから原作本を読んでおいて』なんて言われていたのです。ところが、8月に公開した『男はつらいよ』にお客さんがたくさん入り、その年にすぐに続けて2作撮って、翌年も3本撮って……。『砂の器』の話はどこかへ行ってしまいました(笑)」
全50作。前田さんは25歳から75歳まで、全作に出演した。変わらず出演を続ける苦労もあったのではないか。
「いやいや、ありがたいばっかりです。山田組は緊張感があって、なれ合いが生まれてダラダラする、なんてことは1作もなく、自分なりに1作1作、課題を見つけて取り組んでいました。いつも撮影が終わると、翌日の衣装に着替えて電車に乗ったり、自家用車を運転したりして、大船の撮影所から都内の自宅まで帰っていました。撮影期間中は役に近づくように、と考えていたんです。
一番好きな作品をあげるとすれば、17作目の『寅次郎夕焼け小焼け』。太地喜和子さんがマドンナを演じた作品です。ほかの映画の撮影があって、僕が演じるはずだったシーンを、タコ社長に代わって演じてもらったんですけどね」
寅さん役の渥美清さんが亡くなり、長期に渡ったシリーズは終了。山田監督や倍賞千恵子は健在だが、2022年には寅さんの弟分を演じた佐藤蛾次郎さんやあき竹城さんが鬼籍に入った。