大学で6年間みっちり勉強したうえで常に新薬をチェックしながら調剤し、提供する薬剤師は、誰よりも薬のことを熟知する専門家だ。しかし、直接患者を診察する医師とは違い、彼らが薬について多くを語ることはほとんどない。薬剤師たちは日々、薬局の窓口に立って薬を処方しながら、どんなことを考えているのか。現役で薬の調剤や販売を行う薬剤師3人に普段は言えない“本音”を聞いた。
【座談会に参加した現役薬剤師3人】
A子さん:大手薬局チェーンに勤める30代の薬剤師。
B夫さん:調剤薬局に勤める40代の薬剤師。
C美さん:個人薬局を経営する50代の薬剤師。
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薬について知り尽くしたプロフェッショナルである彼らは、その副作用についても深い知識を持っている。リスクを熟知した3人が「のまない」と声を揃える薬は何か。
A子:市販のかぜ薬はのみません。子供たちにも昔から「かぜ薬は意味がない」と伝えているから、うちの薬箱には総合感冒薬も咳止め薬も鼻炎薬も入っていない(笑い)。
C美:同感です。意味がないどころか、副作用が出やすいという弊害がある。特に総合感冒薬は鼻水を抑えるための抗ヒスタミン薬や眠気を抑えるカフェイン、解熱鎮痛作用のあるアセトアミノフェンなど、たくさんの成分が配合されていて、必要ないものまで体に取り込んでしまうから、すすめられてものみたくない。
A子:うちのドラッグストアに来るお客さんは「昔からあるかぜ薬だから安心」と買っていくけれど、薬であることに変わりはないし、歴史が長いからといって副作用が弱いわけでもない。
B夫:まさかわれわれが「買わない方がいい」なんて言えませんよね(苦笑)。だけどぼくがこの場を借りて言いたいのは、同じメーカーから発売されている症状別のかぜ薬は、ほとんど中身が変わらないということです。よくテレビのCMなどで「かぜのひき始めはこれ」「鼻水がつらいときはこれ」と宣伝しているけれど、実は配合を少し変えているだけ。
C美:薬剤師から見ればどれも大差ないですよね。だけど知らないと何種類も買って、全部服用する人すらいる。そうすると、重複している成分は過剰摂取になってしまう。
B夫:総合感冒薬や咳止め薬に入っていることが多い「コデイン」は特に要注意です。
A子:もともと麻薬系の成分だし、普段からお通じがよくない私としては、便秘の副作用がある時点でNGです。「依存性があるから、できればのみたくない」と思っていた便秘薬が最近やっと手放せるようになってきたタイミングですし……。