大学で6年間みっちり勉強したうえで常に新薬をチェックしながら調剤し、提供する薬剤師は、誰よりも薬のことを熟知する専門家だ。しかし、直接患者を診察する医師とは違い、彼らが薬について多くを語ることはほとんどない。薬剤師たちは日々、薬局の窓口に立って薬を処方しながら、どんなことを考えているのか。現役で薬の調剤や販売を行う薬剤師3人に普段は言えない“本音”を聞いた。
【座談会に参加した現役薬剤師3人】
A子さん:大手薬局チェーンに勤める30代の薬剤師。
B夫さん:調剤薬局に勤める40代の薬剤師。
C美さん:個人薬局を経営する50代の薬剤師。
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A子:最近は物価が上がっているから特に感じるんですが、高いわりに効果がない薬も多い。数千円する市販の目薬なんて、その筆頭だと思う。高価だと成分の種類も多くて、いかにも効きそうな気がするけれど、本来は抑えたい症状に応じてピンポイントの成分だけあれば充分。たとえば、乾燥による疲れ目なら、ビタミンAと、目のこりをほぐす「ネオスチグミンメチル」が入っているものを選ぶようにしています。
B夫:市販薬の場合、そういった高価な薬って、製薬会社にとっては「金のなる木」なんですよね(苦笑)。
C美:市販の栄養ドリンクも値段相応の効果があるようには思えない。砂糖がたっぷり入ってカロリーも高いから、同じ成分のサプリメントを錠剤で摂った方が健康的だし、1回分の単価も大幅に下がると思います。
ジェネリックの「最終結論」
〈2020年に起きた医薬品メーカー『小林化工』による不正をきっかけに、大手製薬会社『日医工』をはじめとして次々とジェネリックメーカーの不祥事が明るみに出た。ジェネリック医薬品の普及率は約8割にのぼるものの、不信感も根強く残っている。薬剤師たちはこの現状をどう見ているのだろうか〉
A子:確かによく、患者さんからも身内からも「ジェネリックって大丈夫なの?」って聞かれますが、ジェネリックの中にもいいものと悪いものがあるというのが、私の結論。
B夫:ぼくもまったく同感です。10年ほど前は「ジェネリックは質が悪い」といわれていました。特に注射なんて本当に効き目がないものもあって、医師も先発品しか使わないような状況だったけれど、研究が進んでずいぶん進歩した。不祥事はあったものの、全体的に改善された印象です。
C美:ということは、おふたりは自分で薬を選ぶときもジェネリックですか? 私は外用薬に限っては先発品を選ぶようにしています。貼り薬や塗り薬だとどうしてもメーカーによって使用感が変わってくる。