ヘッドホンやイヤホンを使い、大音量で音楽などを聴き続けることで発症するのがヘッドホン難聴だ。これは騒音性難聴の一つで、WHOでは世界の12~35歳の約11億人に難聴リスクがあると推計している。騒音性難聴を発症すると4000ヘルツの音が聞き取りにくくなり、日常生活にも支障をきたす。音楽ライブの翌日などに耳が塞がった感じが残る場合は早急に耳鼻科を受診すべきだ。
騒音性難聴は10~20年かけて騒音が激しい職場、例えば炭鉱や造船所などの従事者が発症していた。現在は音を遮断するヘッドホンの着用や定期的な聴力検査が義務付けられており、職場での騒音性難聴は減少している。
その一方で増加中なのがヘッドホン難聴である。ヘッドホンなどを長時間使用し、スマホや音楽プレイヤーなどから大音量で音楽を聴き続けたりすると発症するのだが、当初は難聴を自覚しにくい。
JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科の石井正則診療部長に話を聞いた。
「ヘッドホン難聴は内耳の蝸牛にある有毛細胞という聴毛の一部が傷むことで起こります。なぜか4000ヘルツの音域だけが落ちるので、か行、さ行、た行、は行の声帯を使わずに発声する無声子音が聞き取りにくくなってしまいます。例えば“さとう”が“かとう”に聞こえ、“しちじ”が“いちじ”に聞こえるため、日常生活でトラブルになることもあります」
調査によればヘッドホンなどを使い、スマホや個人用音楽プレイヤーで音楽を聴く人は音量を105デシベル以上に設定するケースが多いという。
ライブ会場でも100~112デシベルの音量の中に長時間滞在するせいで騒音性難聴のリスクが高まる(成人の聴力許容レベルは80デシベル。電車内や飛行機の機内といわれている)。さらにライブ終了後、会場の外に出た際、耳がぼわ~んと塞がったように感じる時は要注意だ。翌日になっても耳が塞がった感じが残っていたら難聴の初期が疑われるため、耳鼻科での受診が欠かせない。