迷走を極める岸田政権。この状況を打破するのは、“ガラスの天井”をブチ壊す女性リーダーの登場ではないのか。自民党の野田聖子・衆議院議員、立憲民主党の辻元清美・参議院議員、共産党の田村智子・参議院議員の3人が、党の垣根を飛び越えて語り合った。(全3回の第3回。第1回から読む)
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田村:自民党の派閥って何なんでしょうね。
野田:もともと私は、河本敏夫先生の河本派でした。当時は河本先生から資金やポストをガッチリもらっていたけど、小渕(恵三)総理あたりから人事の一本釣りが増えて派閥のメリットが減りました。今の若手議員は派閥のパーティーのチケットを売った代金を“上納”して、ノルマの一部がキックバックで還元されます。私が一年生の時と違って大変ですよ。
田村:やはりお金とポストは男性が握る。
辻元:ただ、中選挙区は同じ選挙区に候補者を立てるから派閥争いになったけど、小選挙区は党が公認するから派閥の力が弱まりました。昔の社会党が参院選でドーンと勝って自民党が過半数割れした時、首班指名で土井たか子先生がトップになったんです。衆議院の優越で自民党の海部俊樹さんが首相になったけど、あの時、私は土井さんの姿を見て、いずれは女性総理が登場すると確信しました。要は、選挙に勝てばいいのだし、政治は何が起こるかわからない。
田村:でも小選挙区になって女性が立候補しづらくなった面もあるのでは。
野田:私は小選挙区を支持したんです。中選挙区は自民党議員が複数当選するから、女性議員はいつまでも下っ端のまま。でも小選挙区はそこで勝った者が一国一城の主になり、男女の差はなくなると思っていました。ところが蓋を開けたら自民党は候補者が男性ばかりの上、現職優先という鉄則があるから、最初に男性が候補になるとずっと変わらない。それが小選挙区の欠陥で、中選挙区のように多様な候補者を出す努力が求められます。
田村:女性総理を生むには派閥も変わらないと。
野田:リーダーの資質によって派閥の結束力は変わります。二階(俊博)さん、麻生(太郎)さん、安倍(晋三)さんはポストや資金繰りの面倒見がよく昭和的な派閥のリーダーですが、小選挙区で選挙を戦う今はガテン系のボスが見当たらない。
辻元:私が痛感するのは、政治の構造が変わったということ。自民党の総裁選で従来型の派閥の支持を得て出馬したのは岸田(文雄)さんだけで、麻生派の河野(太郎)さんは麻生さんの支持がないまま出馬した。昔では考えられません。派閥の親分が総裁選に出る構図が変わったのはトップをめざす女性には大きなチャンスです。野党だって、20人ほどの推薦人を集めれば代表選に出られるわけです。
田村:そうですね。でも私は、男性の権力争いの中に権力欲のある女性が現われて、これまでと同じような権力闘争に勝って女性総理になるのは見たくない。日本の課題を解決するために女性総理を求める声が高まり、「日本はこれで変わるんだ」という大きな期待感の中で、女性総理が誕生してもらいたい。
(了。第1回から読む)
【プロフィール/当選回数順】
野田聖子(のだ・せいこ)/1960年生まれ。自民党衆議院議員。上智大学卒業後、帝国ホテルに入社。1993年、初当選。総務大臣、幹事長代行、男女共同参画担当大臣などを歴任。岐阜1区選出、当選10回。
辻元清美(つじもと・きよみ)/1960年生まれ。立憲民主党参議院議員。早稲田大学在学中にNGO設立。1996年、初当選。旧立憲民主党初代政務調査会長、同幹事長代行、立憲民主党副代表などを歴任。比例区選出、当選衆7回、参1回。
田村智子(たむら・ともこ)/1965年生まれ。共産党参議院議員。早稲田大学在学中に日本共産党に入党。2010年、初当選。日本共産党中央委員会中央委員、党副委員長、党中央委員会政策委員長などを歴任。比例区選出、当選3回。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号