新型コロナウイルスの第8波が長く居座っている。そんななか、昨年末に東北大学の研究チームが漢方の「葛根湯」と「小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)」がコロナ対策として、発熱緩和や重症化の抑制に有効であると発表して大きな話題を呼んだ。
今回の研究のヒントになったのはおよそ100年前のスペインかぜだ。当時、漢方の「柴葛解肌湯(さいかつげきとう)」が治療に使われていたが、それに「葛根湯」と「小柴胡湯加桔梗石膏」が含まれていたのだ。
なかでも葛根湯は“最古の漢方薬”といわれ、「葛根」「大棗」「麻黄」「甘草」「桂皮」「芍薬」「生姜」の7種類の生薬で構成される。ちくさ病院副院長の近藤千種さんは、まさに最強の漢方薬だと力説する。
「葛根は血行の促進や発汗作用があります。大棗は筋肉の緊張をやわらげたり神経過敏を抑え、麻黄は交感神経を刺激して気管支を広げる作用があります。甘草は抗炎症作用や鎮痛作用、去痰作用、鎮咳作用などがある。桂皮にも体を温める効果があります」(近藤さん・以下同)
葛根湯は、まずはかぜのひき始めに効果を発揮する。
「人間の体は外敵が入ると体温を上げ、免疫機能を活性化させて治癒します。体内の酵素活性を高めるには38℃以上の体温が有利といわれますが、葛根湯をのむことによって体が温められ免疫機能が働き、症状がひどくなる前に戦う能力を引き出してくれます」
歌手のaiko(47才)はかつて《風邪治った!ありがとうカコナール》とツイッターに投稿(カコナールは葛根湯を抽出した薬剤)。
カラテカの矢部太郎(45才)は、年中かぜだと言い、毎朝なんと朝食代わりに葛根湯をのんでいるとテレビで語っていた。
「葛根湯がよく効くといわれる理由は、成分の絶妙なバランスゆえ。
例えば、本来は体の免疫反応などのバランスを調整する役割のあるたんぱく質、サイトカインが暴走して免疫系細胞から過剰に分泌される『サイトカインストーム』が引き起こされると、かぜの症状はどんどん悪化します。
しかし、桂皮にはサイトカインストームを抑える作用があるので、重症化しづらくなる。また、芍薬には過剰な発汗を引き起こさないよう抑制する効果があるなど、7種類の生薬がいろいろな面で免疫力を良好に働かせるのです」
気温が下がり、体温も下がりがちな冬はウイルスが大敵。新型コロナやインフルエンザなど、さまざまなウイルスにさらされることになりそうだが葛根湯があれば安心だ。
「自分がどのウイルスに感染したかわからない状態でも、葛根湯をのんで問題はありません。体調不良を感じたらすぐに服用して、少しでも免疫力を上げて悪化させないようにしましょう」
ほかにも、葛根湯は頭痛や肩こり、結膜炎や乳腺炎といったさまざまな体の不調を改善できる。
「体を温め、血流がよくなることで筋肉がほぐれ、その結果、肩こりがよくなったり、筋肉のこわばりによる緊張型頭痛が改善します。体に起こる炎症も、血流がよくなったり免疫機能が高まることで症状が抑えられます。
すべてにおいてのポイントは、葛根湯が体を温め、自己治癒能力を高めるということです」