いざというときに頼りになるはずの市販薬だが、頼りすぎた結果、牙を剥く可能性がある。薬剤師の長澤育弘さんが言う。
「市販薬の中には少量ですが、のみ続けることで麻薬と同様の依存性が生じる成分が含まれる商品もある。実際にドラッグストアで咳止め薬などを大量購入し、服用し続ける人が問題視されています」
依存のリスクがあるとはいえ、処方箋なしで購入できる市販薬は私たちの生活に欠かせない。体に負担をかけずに正しく適量を服用するためには何が必要なのか。総合内科専門医で『医師が教える市販薬の選び方』の著書がある平憲二さんは、まずは安易に薬をのまないという心がけが必要だとアドバイスする。
「どんな薬にも必ず副作用は起こりうる。だから、薬は使うメリットがデメリットを上回るときだけに使うのが原則です。眠気覚ましにコーヒーを飲むような感覚で、『ちょっと調子が悪いから』と薬をのむ人もいますが、避けるべき。『このくらいの症状なら何とかなる』と思える軽い症状ならば、薬をのまずに経過を見守るのも1つの選択です」(平さん・以下同)
薬をのむことを選択した場合、できるだけ成分の種類の少ないシンプルなものを選ぶことも重要だ。
「種類が多いほどに副作用のリスクは高まります。一つひとつの成分が持つ副作用のリスクに加え、相互作用によっても害が出る可能性がある。成分が1種類のものを選ぶなど、できるだけシンプルにした方がいいでしょう。例えば風邪なら何にでも効く総合感冒薬ではなく、咳や発熱など症状別の市販薬を選ぶのも手です」
その際、購入する前にパッケージの裏側を確認することも忘れずに行いたい。
「解熱鎮痛薬のロキソプロフェンなど、一見すると成分が1種類しか含まれていない薬であっても、処方薬とは違い市販薬にはそれに加えて『無水カフェイン』など別成分が配合されているケースもある。パッケージを確認したり、購入時に薬剤師や医薬品登録販売者に相談すると安心です。
また、複数の市販薬をのみ合わせることは同じ成分が重複しているためできるだけ避けた方がいい」
重複しやすい組み合わせとして代表的なのは、風邪薬と咳止め薬、鼻炎薬だ。
「アッパー系の依存性を持つ『エフェドリン』や『無水カフェイン』はほとんどの風邪薬や咳止め薬、鼻炎薬に入っています。花粉症の薬をのんでいて、風邪気味だからと風邪薬を追加で服用するのはよくあるパターン。無意識のうちに過剰摂取につながり、副作用によって頻脈や高血圧のリスクが上がることもあり得る」
最近は海外の薬をインターネットで購入する人も増えているが、長澤さんは「絶対にやめるべき」と警鐘を鳴らす。