初回が放送され、話題を呼んでいる松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』。コラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんはどう見たのか。ペリーさんが解説する。
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『どうする家康』初回を見て、「大河ドラマも変わったものよのお」と感慨深かった人は多いと思う。
荒々しい戦国時代が舞台のドラマでありながら、オープニングタイトルの映像は、高級和菓子の包み紙のような和モダンデザイン。キャスト、スタッフクレジットも横書きだし、タイトルロゴも横書きだ。
そして、一番興味深かったのは、映像作品の中で描かれてきた徳川家康と今川義元のイメージをほぼ逆転と言っていいほど、大きく変えたこと。
出だしは桶狭間の戦の真っ最中。雷雨の中、松平次郎三郎元信(のちの徳川家康・松本潤)は、こっそり城を抜け出して、「もう嫌じゃああああ」と絶叫している。
もともと家康は、幼いころより人質として今川義元(野村萬斎)のもとで暮らしていた。十代半ばになっても楽しみは手作りの人形遊びという彼は、剣術の稽古で義元の嫡男・氏真(溝端淳平)にやっつけられては泣きべそをかくような性格で、世話役の石川数正(松重豊)らに「あちゃー」という顔をされる毎日。しかし、そんな次郎三郎だが、密かに心を通わせる瀬名姫(有村架純)の伴侶を決める対決では、氏真に勝利する。義元は、いつも次郎三郎がわざと負けていたことを見抜いていたのだった。
家康と言えば、人質という苦しい立場を耐え抜き、学問や武術に励んだ“苦労人”として描かれる一方で、織田信長、豊臣秀吉が命がけで平らげた天下を自分のものにした“狸親父”と描かれることも多かった。しかし、今回の家康は、今川ではそこそこ待遇もよく、どこかのんびりとしたお坊ちゃま風。愛妻の瀬名に「弱虫、泣き虫、鼻水垂れ」と心配される弱腰侍なのである。
こんな「殿」なのに、寺島しのぶの語りは、冒頭から「神の君」としれっと呼んでいる。画面に出ている家康とはえらい違い。こんなところも、このドラマらしい。