コロナ禍にいまだ終わりが見えぬなか、今年がいい1年になるかは健康次第だ。『80歳の壁』のベストセラー医師・和田秀樹氏と師弟関係に当たる解剖学者・養老孟司氏が語り合った。【前後編の前編】
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和田:2023年を「どう健康に生きるか」というテーマですが、養老先生、いかがでしょう?
養老:企画した週刊ポストには悪いけど、やっぱりそういうことを意識しないほうがいいんじゃないですか(笑)。85歳になった今、自分でも気にしていません。今は過去の積み重ねで決まっているもので、今さら何を言ってもしょうがない。大体、考えて色々やってみても、その通りにはいかない。物事は全部わかっているわけではないので、まあ、成り行きですね。
和田:先生の仰る通りだと思います。先のことはわからない。問題は医者が患者に言う内容で、「コレステロールが高ければ心筋梗塞になる」とか、「血圧が高いのを放っておけば脳卒中になる」なんて言いますが、なる人とならない人がいます。だから(病気に)なった時に、なってから考えたほうがいいと思います。
将来病気になる確率を少しでも下げようと考え出すと、生活がどんどん窮屈になる。コロナにかかりたくないから外に出ない、脳卒中になる確率を少しでも下げようと味のしないものを食べる、とか。果たしてそれでいいんでしょうか。
私なんて血圧は一時期220mmHgにもなり、今も基準値より高い170mmHgまでしか下げていません。「そんなんじゃ心筋梗塞や脳卒中になりますよ」と言われますが、調子がいいんだから、それでいいと思う。養老先生が煙草をお吸いになると「身体に悪い」と言う人がいますが、煙草を吸って100歳まで生きる人もいらっしゃる。
養老:実はこの前、病院に行った時に、軽い心筋梗塞が起こっているかもしれないと指摘され、1月に病院に行く約束があるんです。「心臓のCTを撮りましょう」って。
結果がいいのか悪いのかわかりませんが、でも私はそんなことわかってもしょうがないと思っている。どのみち、そんなに長くは生きてないだろうし(笑)。もう万事、医者任せ。病院とお付き合いするのも、私にとっては付き合いのうちですから。でも、その前に病院に行った時は「数値は別に悪いものはない」と言われていましてね。
和田:それは凄いですね。
養老:「じゃあ、私は何で死んだらいいんですか」って(笑)。しょうがないですね。(小林)一茶じゃないけど、“ともかくもあなた(医者)任せの年の暮れ”ですよ。