人により異なる「趣味」。老後も続ければ生涯の楽しみとなるが、その内容こそ寿命に影響する。国際未病ケア医学研究センターの一石英一郎医師が言う。
「北陸先端科学技術大学院大学教授の頃、学生らと共同で音楽などの趣味や癒しが体に与える影響を実験で調べたところ、ストレスを低減させることがわかりました。音楽などの趣味は、体の免疫力を上げ、結果的に寿命を延ばす可能性があると言えそうです」
一石医師の指摘と符合するかたちで、音楽の寿命への影響を示唆するような大規模な調査の結果も出ている。
2019年に英医学誌『BMJ』で発表された研究結果によると、50歳以上のイギリス国民6710人を約14年間追跡した結果、2~3か月に1回コンサートや美術館に行く人は、まったく行かない人に比べて死亡リスクが約31%も低かった。
国内では、落語などのお笑いが健康によいとの研究結果がある。2022年に発表された福島県立医大などの研究者らによる比較試験では、落語の鑑賞や笑いヨガの実践などで構成された90分のプログラムを受けた群は、そうでない群と比べてストレスや幸福感などの改善幅が有意に大きかった。
運動系の趣味はどうか。スポーツをする習慣は“健康によさそう”という漠然としたイメージはあるが、種目によって寿命への影響が異なるとの研究結果がある。
2018年に米医学誌に発表されたデンマークと米国の研究チームの論文によると、20~90代の男女計8577人を約25年間追跡した結果、スポーツをする習慣がない人に比べて、スポーツをする人の平均余命はテニスが9.7年、バドミントンが6.2年長かった。ジムでのエクササイズも1.5年長かったが、テニスなどと比べれば少ない。一石医師が言う。
「テニスなどの種目は骨と筋肉の両方が刺激され、骨からはオステオカルシン、筋肉からは(善玉の)マイオカインと、老化や病気の予防に役立つホルモンの分泌が増えます。また、論文が指摘するように、相手がいるスポーツは社会的なつながりを持ちやすく、長生きに寄与すると考えられます」