安倍晋三・元首相に関する「国賊」発言で処分された村上誠一郎・衆議院議員(70)。かねてから自民党の“異端児”として歯に衣着せぬ物言いで注目を集めてきた彼が、師匠として慕っていた梶山静六さんとの思い出を語る。(聞き手/ノンフィクション作家・常井健一氏)【全3回の第2回。第1回から読む】
──村上さんはかつて河本派(後の山東派時代に麻生派に吸収合併)でしたが、別の派閥だった梶山静六さんとも接点があったのですね。
「PKO国会の頃、梶山国対委員長の下の副委員長だもの。朝から晩まで怒鳴られながら走り回ったよ。梶山さんがスゴイのは1年先まで毎日の計画が手帳に書いてある。つまり、1年後の着地点から逆算して今日やるべきことを決めている。一方で、各党の国対委員長と毎晩飲み会をやるわけよ。社会党の村山富市さんや公明党の神崎武法さんらと一杯やって、先に帰す。
だけど、われわれはカラオケ40曲歌うまで帰れない。2時頃、梶山さんの『夜来香』(李香蘭が歌った名曲)を聴くまで付き合って、翌朝8時には各委員会の進捗状況を梶山さんに説明する」
──「昭和」ですね。
「学生時代の先生が『永田町はヘベレケ共同体だ』と言っていたけど、その通り。梶山さんはストマックとかいう(名前の)胃薬を飲みながら、全身全霊で野党を接待するわけよ。だから、早く逝ってしまった」
──村上さんは「反安倍の急先鋒」で有名ですが、素顔はあまり知られていません。この部屋には棋士との写真がありますが、将棋が趣味なんですね。
「悪いけど、アマチュアの将棋七段なんだ。佐藤康光将棋連盟会長(九段)や羽生善治九段、行方尚史九段、山崎隆之八段に飛車落ちで勝ったことだってある。その棋譜もちゃんと残っているよ」
──村上さんは選挙も強くて、12戦連勝です。
「自民支持層の9割に加え、無党派層が7割近く応援してくれるんですよ。共産党支持者まで入れてくれる」
──無敗の秘訣は?
「うそをつかない、ぶれない、誠実にやる」
──そのほかに、盤石の後援会がちゃんとある?
「そんなの、ありません。私はあまり地元に帰らないしね。出陣式にも200~300人しか来ないよ」