芸能

井筒和幸監督が「タイパ」に苦言!映画の倍速視聴をバッサリ「映画は他人の人生につき合って、どこまで人間らしいかを見つめる装置」

映画を倍速視聴する人が増えているという(写真/イメージマート)

映画を倍速視聴する人が増えているという(写真/イメージマート)

 昨年、「今年の新語2022」の大賞にも選ばれた「タイパ」。タイムパフォーマンスの略で、費やした時間に対する満足度を示した言葉だ。巷ではタイパを重視するため、映画などのコンテンツを倍速視聴する人も少なくないという。そんなタイパ重視の風潮に、井筒和幸氏が自らの考え方を綴る。

 * * *
 映画やドラマなんか、倍速や早送りで十分だ、粗筋と結末を知ればいい、時間がもったいないという横着者が増えている。そのどこが、タイムパフォーマンスなんだ。タイパ、コスパ。嫌な言葉だ。

 去年は、自分で2時間の映画を10分間に編集した「ファスト映画」を、動画サイトにアップし、700万円の広告収入を稼ぎ、訴えられて5億円の損害賠償命令を出されたバカな若い男女がいた。しかも、そんなデタラメなモノでも10万人以上が見た計算の広告収入とか。そんな横着見をして、一体、何の得になったのか。意味が解らない。

 映画人も倍速やシーンを飛ばし見することは多々ある。それは内容を知ってるからで、原版を知らない者が飛ばし見したところで何が解るというのだ。終生、勘違いしてしまうだけだ。それこそ「費用対効果」もヘチマもない。逆効果で大失敗の巻だ。それこそ時間の無駄使いだろ。「時間」は神でさえ縮められない。この世の常識だ。

 Twitterにインスタ、YouTubeにネットニュース。こんなものに一日中囚われていると、視覚も脳も疲れがたまって当たり前だ。スマホをいじりっぱなしで横断歩道で、一人でひっくり返っている者もいる。そんなに時間が惜しいのか? そんなに余裕ないのか? 何に追い込まれてるんだ? 「既読」「未読」ごときで、口喧嘩してる奴までいる。おかしいと気づいていないのか。

 疲れた脳は、疲れついでに映画なんか飛ばし見でいいと判断するのだろうか。で、登場人物を、こいつは敵か味方かだけで見てしまうのか。凡庸な勧善懲悪モノが多いのは確かだが、しかし、敵か味方かだけ探ったところで何も得ない。映画は他人の人生につき合って、そ奴がどこまで人間らしいかを見つめる装置だ。そ奴が愚か者だろうがサイコキラーだろうが、そ奴に入り込んでこそ見えるモノがある。結末だけ追って、何が見えるんだ。

 動画配信サービスの、視聴者を逃がさないためにある、10秒、30秒飛ばし機能は大問題だ。おまけに、エンディングの音楽とタイトルロールが始まると自動的にカットされ、お勧め番組の案内まで出てくるものまである。大きなお世話だが、これも視聴をやめるのを引き止めるためで、我々製作者と視聴者をバカにした機能だ。

こっちは劇場のスクリーンに合わせて画面を作ってる

 スマホで映画を見る怠け者も増えた。それで、「カントクの『無頼』なんか、似たようなヤクザ顔が100人出てきても、顔も小さくて区別がつかんわ」なんてSNSで書き込まれたら、身もフタもない。

関連記事

トピックス

ホームランを放ち50-50を達成した大谷翔平(写真/AP/AFLO)
大谷翔平の“胃袋伝説”「高校時代のノルマは“ご飯どんぶり13杯”」「ラーメン店でラーメン食べず」「WBCでは“ゆでたまご16個”」 
女性セブン
3度目の逮捕となった羽賀研二
《芸能人とヤクザの黒い交際》「沖縄のドン」から追放された羽賀研二容疑者と弘道会幹部の20年の蜜月 「幹部から4億円を借りていた」
NEWSポストセブン
寄木細工のイヤリングと髪留めが「佳子さま売れ」に(時事通信フォト)
佳子さまのイヤリングが「おしゃれ!」でまたも注文殺到 訪問先の特産品着用され想起される美智子さまの心配り
NEWSポストセブン
自民党の新総裁選に選出された石破茂氏(Xより)
《石破茂首相が爆誕へ》苦しい下積み時代にアイドルから学んだこと「自分の意見に興味を持ってもらえるきっかけになる」
NEWSポストセブン
内村光良のデビュー当時を知る共演者が振り返る
【『内村プロデュース』が19年ぶり復活】内村光良の「静かな革命」 デビュー当時を知る共演者が明かしたコント王の原点
週刊ポスト
仮設住宅も浸水した(写真/時事通信)
「被災地はゴミ捨て場じゃない」という訴えはなぜ届かないのか
NEWSポストセブン
歌手・タレントの堀ちえみ(左)と俳優の風間杜夫(右)
【対談・風間杜夫×堀ちえみ】人気絶頂期に撮影された名作『スチュワーデス物語』の裏側「相手が16才の女の子だろうと気を抜けないと思った」 
女性セブン
エミー賞を受賞した真田広之(写真/Reuters/AFLO)
エミー賞受賞の真田広之、中村勘三郎さんとの知られざる親交 深夜まで酒を酌み交わし芝居談義、遺影の前で孫にチャンバラを手ほどきしたことも 
女性セブン
石破茂氏の美人妻(撮影/浅野剛)
《新総裁》石破茂氏が一目惚れした美人妻が語っていた「夫婦のなれ初め」最初のプロポーズは断った
NEWSポストセブン
若林豪さんにインタビュー
『旅サラダ』卒業の神田正輝が盟友・若林豪に明かしていた「体調」「パートナー女性」「沙也加さんへの想い」《サスペンスドラマ『赤い霊柩車』で共演30年》
NEWSポストセブン
テレ東アナに中途入社した
【異例の中途採用】大手証券会社からテレ東アナに! 嶺百花「ナンバーワンお天気お姉さん」が回り道して夢を叶える
NEWSポストセブン
3年前に出所したばかりだった
《呼び名はチビちゃん》羽賀研二とそろって逮捕された16歳年下元妻の正体、メロメロで交際0日婚「会えていません」の嘘
NEWSポストセブン