阪神からポスティング・システムを利用し、メジャー挑戦を目指していた藤浪晋太郎がアスレチックスと1年契約を結び合意した。
昨シーズンは16試合登板で3勝5敗、防御率3.38。2016年以来2ケタ勝利がなく、2018年(5勝3敗)以降は負け星が上回り1軍に定着できていない。年俸は2021年オフに6年連続ダウンの4900万円に。悩める右腕のメジャー挑戦に、国内では「獲得する球団があるのか」という懸念の声が上がったが、蓋を開けてみれば複数球団による争奪戦に。複数の報道によると、藤浪がアスレチックスと結んだ契約は、年俸325万ドル(約4億2000万円)。出来高を含めると5億円を超えるという。年俸が約10倍に跳ね上がるという大幅昇給を勝ち取った理由について、米国で取材する通信員はこう語る。
「米国では新型コロナの感染拡大が収束し、メジャーの各球団の懐が潤っています。MLBの観客動員数はコロナ以前まで回復し、総収入は110億ドルを超えて過去最高を記録しています。そのため、各球団が補強費に積極的に投資できている。あとは“メイド・イン・ジャパン”投手への信頼感です。完成度が高く、活躍する投手が多いのでメジャーの各球団は日本のマーケットの調査に力を入れています。藤浪は制球難で自分を見失っていた時期がありましたが、昨年の夏場に1軍昇格すると先発で安定した制球力を見せたことで、各球団の評価が上がった。救援での評価が高い球団が多かったが、昨季ア・リーグの西地区最下位に沈んだアスレチックスは先発陣のコマ不足が深刻で、先発を希望する藤浪の条件と合致していた。活躍できれば、強豪チームにトレードでステップアップできる可能性がある」
もちろん結果を残さなければ、1年で退団もあり得る。厳しい世界だが、阪神で背水の陣を迎えていた藤浪は覚悟の上での挑戦だろう。しかし、この藤浪のメジャー挑戦は日本球界で別の波紋を呼んでいる。在京球団の編成担当は、危惧を口にする。
「かつては巨人にFA移籍することがステータスだったが、今はメジャーでのプレーを夢見る若い選手が多い。藤浪を見て、メジャーで力試ししたいという思いになっても不思議ではない。そこには“年俸格差”も理由の1つでしょう。長年、阪神で活躍できていないにもかかわらず、これだけの契約を結べるわけですからね。たとえ通用せずに日本球界に戻ってきても、争奪戦になり渡米前の数倍の年俸を得られるチャンスがある。