1980年の放映で平均視聴率40.2%をとったNHK連続テレビ小説『心はいつもラムネ色』に出演し、一気に知名度を上げた俳優・美木良介が、独自の呼吸法「ロングブレス」を世間へ発表したのは2011年のことだ。「話題作りか?」「ただの呼吸で何ができる?」との数々の誤解を吹き飛ばし、今や多くの大企業経営者がロングブレスを実践している。この10年以上もの間、ロングブレス普及を支える美木はどのような日々を送っていたのか。
ロングブレスとは、強く長く吐く呼吸を基本としたトレーニングを指す。美木が赤坂に構えるスタジオでは、呼吸を止めず、頬を膨らませ「ぶぅー!」と力強く吐きながらの基本姿勢、日常動作、筋トレの指導がなされてきた。スタジオはプライベートレッスンの予約で数か月先までビッシリ埋まる。
一部上場会社の社長であれ、政治家であれ、男性なら上半身裸となり壁一面の鏡と向かい合うのが個人レッスンでのルールだ。肩書をも脱ぎ捨てた彼らに対し、美木はキツイと評判のトレーニング・メニューを課して叱咤激励する。
「怒られる経験が皆無となった大企業の社長や会長たちにとって、『それはダメ!』と人に叱られるのはここくらいじゃないですかね」
指導者の美木に叱られヘトヘトになること必至にもかかわらず、激務の合間を縫ってスタジオに通う経営者が後を絶たないのは、短時間で効率よく筋力がつくからだ。上半身裸にさせるのも、短時間で変化した肉体を自分の目で確認してもらうためである。