スポーツ

女子高生だった力道山未亡人が海辺で紹介された大スター「石原裕次郎」との邂逅【力道山未亡人~元日航CA・田中敬子の数奇な半生~#9】

憧れの石原裕次郎と記念撮影をした敬子(写真提供/田中敬子)

『嵐を呼ぶ男』撮影中の石原裕次郎と16歳の田中敬子(写真提供/田中敬子)

“日本プロレスの父”力道山が大相撲からプロレスに転向し、日本プロレスを立ち上げてから2023年で70年が経つ。力道山はすぐに国民的スターとなったが、1963年の殺傷事件で、39年間の太く短い生涯を終えた。しかし、力道山を取り巻く物語はこれで終わりではない──。彼には当時、結婚して1年、まだ21歳の妻・敬子がいた。元日本航空CAだった敬子はいま81歳になった。「力道山未亡人」として過ごした60年に及ぶ数奇な半生を、ノンフィクション作家の細田昌志氏が掘り起こしていく。第9話では敬子が女子高生時代に出会った大スターとの一瞬の邂逅を振り返る。【連載の第9回。第1回から読む】

 * * *

第9話「ファンレター」

 1957年4月、田中敬子は有数の進学校である神奈川県立平沼高等学校に入学した。外交官を目指して勉強に励みながら、軟式庭球部でも毎日クタクタになるまで練習した。

 勉強と部活に忙しく、中学生のときのように孤独を感じる暇はなかった。何しろ進学校である。学力は総じて高く、優等生気分だった敬子の鼻はあっさりへし折られた。

五月二十日(月)

 ここのところ少しうんざりしているのよ。だって新入生テストの席次が決まったのよ。八二番目よ。総合点五〇〇点で私の得点は三八〇点よ。七二%しかとれていないのよ。通信簿に左右されてしまうでしょう。困ってしまう。数学と国語は平均点より少ないの。がっかりして何もしたくなくなっちゃうわ。六月に中間考査があるでしょう。バンカイね、断然!(日記より・原文ママ)

 多くの高校生がそうであるように、敬子の興味の対象も変わった。洋画を見るようになり、海外の人気俳優に惹かれるようになった。『ローマの休日』のオードリー・ヘップバーンと相手役のグレゴリー・ペック、『カサブランカ』のハンフリー・ボガード、『旅情』のキャサリン・ヘップバーン……。数か月前まで市川雷蔵や阪東妻三郎を追いかけていたのが嘘のようだ。

『キネマ旬報』の巻末に「あなたも海外スターにファンレターを送ろう」とあった。これはいい。英文でファンレターを書いてみよう。英語の勉強にもなるはずだ。敬子は難しく考えず、便箋に何の気なしに書いては次々と投函した。主だったスターには書き送った。「遠く日本から応援しています」といった他愛もない内容だが、国際郵便を出すたびに外交官に一歩近付いた気がした。

 返事が来ればいいけど来ないに決まっている。別に来なくていい。本人が手に取ってくれさえすればいい。──そう思っていたら、自宅の郵便受けに英文のレターが入っていた。何と返事が来たのだ。急いで開封すると、サイン入りのプロマイドが入っていた。チャールトン・ヘストンからである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン