1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動している。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、厩舎の一日についてお届けする。
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関東の厩舎はすべて茨城県の霞ケ浦近くにある「美浦トレーニング・センター」内にあります。東京ドーム48個分ということなので相当広いですよね。ここに1周最大2000mの馬場や全長1200mの坂路調教コース、その他リラックスさせるための森林馬道やスイミングプール(馬のです)、そして100棟以上の厩舎があります。詳しくはJRAのホームページを見てください。施設案内の動画なんかもあります。
今回は特に競馬が行なわれない日、我々がこのトレセンでどういう時間を過ごしているかについてお話ししましょう。
全休日(通常は月曜日)を除いて朝は冬なら7時から馬場が開くので、スタッフは5時ぐらいには厩舎に来て調教の打ち合わせや準備、ウォーミングアップなどをします。
僕はみんなが出揃ったころに顔を出して、まずは厩舎にいる16頭に一通り挨拶して回ります。ジョッキー時代は、いろいろな厩舎で乗っていたので立ち寄ったついでに顔を見る程度。落ち着いて一頭一頭と向き合うことはなかったけれど、今は朝だけじゃなくて、スタッフがいない時なども馬房の方を覗いて、何か変わったことはないかを観察します。こちらに寄ってくる子もいれば、横になっている子もいる。そんな子には「いいから、寝てろ寝てろ」って言います。なかには噛みつこうとする子もいる。僕があれこれ指示して走らせているんだってわかっているのかもしれない(笑)。馬の「素」の姿を見ることで、自分の厩舎なんだという思いを噛みしめている感じでしょうか。
午前中は5時間ぐらい調教や運動をしていったん解散。その後に朝食(ブランチ?)です。騎手時代も調教師になってからも食事はこの時と夜の1日2回です。朝が早いので、昼寝をしているスタッフも多いんじゃないかと思います。
で、午後は2時頃から5時頃まで軽い運動、馬体のチェックや厩舎作業です。また、週に1回、水曜日のこの時間には全員でミーティングをします。せいぜい15分ぐらいですが、ちょっと気が付いたことや、念押ししておきたいことを話します。スタッフからの提案なども、なるほどと思えば、どうしたらいいのか話し合ったりします。