「路面電車」と聞くと、昔の乗り物というイメージがあるかもしれない。ところが、最近では超低床化など進化をとげたLRT(次世代型路面電車、Light Rail Transit)の登場によって、新しい街づくりのための新しい交通手段として再注目を集めている。日本一の路面電車王国、広島で浮上した新テーマパーク構想など、市民の足として未来の路面電車の可能性についてライターの小川裕夫氏がレポートする。
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2022年に日本の鉄道は開業150年を迎えた。通常なら連日、にぎやかに鉄道の話題がテレビ・新聞・雑誌・インターネットなどで盛んに報道されただろう。節目の年にも関わらずコロナ禍から抜けきれないこともあって、全体的に地味に終わった印象は強い。とはいえ、100年を超えた鉄道の未来をうかがわせる話題もある。2023年8月頃に開業予定されている宇都宮ライトレールあたりなどは、その代表格といえよう。
ライトレールとは、1950年代から1960年代にかけて日本全国で活躍していた路面電車を進化させた乗り物だが、鉄道に詳しくない人から見ると「昭和の古い電車を、なぜ令和の今さら復活させるのか?」と疑問を抱くだろう。
しかし、路面電車は決して昭和の遺物ではない。むしろ世界各国で見直し機運が高まり、多くの都市で復活を遂げている。
広島で運転体験テーマパーク構想
路面電車再評価の流れは、日本にも及ぶ。その際たる例が前述した栃木県の宇都宮ライトレールといえるが、既存の路面電車でも広島電鉄(広電)が、新年早々から話題を集めている。その理由が、椋田昌夫社長が地元政財界関係者の集まりや地元紙の中国新聞に対して「電車の運転体験ができるテーマパークをつくりたい」と口にしたからだ。椋田社長が語った電車の運転体験ができるテーマパークとは何なのか?
「あくまで弊社の社長が個人の夢として語ったもので、現段階で具体的な動きがあるわけではありません」と前置きしながら説明をするのは、広島電鉄経営管理本部総務課の広報担当者だ。
広電は、広島県広島市を中心に廿日市市にも路線網を有する。6路線の軌道線(路面電車)で総延長では約19.0キロを運行している。このスケールの大きさゆえに、広島は日本一の路面電車王国とも呼ばれる。さらに、宮島へとアクセスする鉄道線が約16.1キロメートルもある。宮島線は厳密には路面電車として扱われていないが、同じ車両がそのまま乗り入れる。