ライフ

受けたくない治療を断るにはどう伝えればいいのか 医師との上手なコミュニケーション術

腹腔鏡手術によって8人が命を落としたほか、計30人もの術後死が明らかになった群馬大学病院。「医師任せ」が最悪の結果を生むケースもある(2014年11月。時事通信フォト)

腹腔鏡手術によって8人が命を落としたほか、計30人もの術後死が明らかになった群馬大学病院。「医師任せ」が最悪の結果を生むケースもある(2014年11月。時事通信フォト)

 治療や薬に疑問を持ったとしても、医者が言うことを否定するのは気が引けてしまうこともあるだろう。患者が医師の言いなりにならないためにはどうすればいいのか。医師との上手なコミュニケーションの取り方を探る。

 受けたくない治療を断ることは、自分の体を守ることにつながる。では、どう医師に伝えるべきなのか。東京医療センター内科医長の尾藤誠司さんがアドバイスする。

「まず意識すべきは、否定から入らないこと。医師は治療を提案するとき、すでに副作用と効果を検討して、効果が上回ると判断しています。そのため『この治療や薬は問題があるんじゃないか』と言われると『大丈夫です』という答えしか期待できない。

 伝えるときは、『痛みに弱いので、手術が気がかりです』『初めての薬だし、副作用が気になってしまう性格だから、不安があります』などと、気持ちを前面に出した方がいい。個人の受け止め方について、医師は否定できません」(尾藤さん)

 雑誌で見たことやインターネットを通じて知った情報は、医師に話しても問題ないのだろうか。尾藤さんが続ける。

「そうした情報を相談すること自体はかまいませんが、言い方には気をつけましょう。『ネットに書いてあったから、この薬はのまない』と自分の意見を主張するのではなく、『ネットに書いてあったので、心配になりました』と相談を持ちかけるのがベター。言い方で印象が変わってきます」

 島根大学医学部附属病院 臨床研究センター教授の大野智さんも、治療に疑問を持ったときこそコミュニケーションの取り方が重要になると指摘する。

「私も患者として病院にかかるときは気を使います。以前、じんましんでステロイドを服用していましたが、しばらく経っても効果が見られないので、やめたいと思いました。とはいえ、医師には『のみたくない』とは伝えません。『いつまでのめば効果が出ますか?』と質問したところ、こちらの意図を察して薬を替えてくれました」

 しかし、いざ診察室に入って医師と対峙すると緊張してうまく話せない人も多いだろう。多くの医師は「メモを使って伝えた方がいい」と口を揃える。

「メモで可視化すれば、悩みを整理できるし、伝えるときに失敗しにくくなります。不安のあまり感情的になって問題の本質が見えなくなっている人は意外と多い。患者自身が悩みを整理できていないと、解決策を探るのが難しくなります」(大野さん)

 まずは、不安に思っていることや疑問を紙に書き出してみること。そこから優先順位が高い2?3個を選んで、相談用のメモを作成する。

「メモを作るときは、相談した後で自分や主治医が書き込める余白を残しておくのがコツです。診察日は、医師に『質問があります』と伝えて、用意したメモを読みあげるだけで大丈夫です。時間がなければ『お返事は次の外来でいいです』と伝えて、メモを渡すだけでもかまいません」(大野さん)

 メモ作りと並行して行いたいのは「Why(なぜ)」と「How(どうなりたいか)」を整理すること。

「たとえば薬を減らして健康食品やサプリメントを取り入れたいのなら、『なぜそう考えたのか』『使うことによってどうなりたいのか』を考える必要があります。

 具体的に言えば『治療で体重が減ったから、健康食品で充分な栄養を摂りたい』『抗がん剤で免疫力が下がると聞いたから、免疫力を高める成分をサプリメントで取り入れたい』という具合です。事情によって、医療者側の対応方法も変わってきます。健康食品を使わずに解決できるかもしれません。なぜそう思うのかを医師から聞かれたら答えられるようにしておくといいでしょう」(大野さん)

 治療において何を優先したいかを伝えることも重要だ。

「同じ病気であっても、『延命しても寝たきりは嫌』『痛みをいまの半分にしたい』『3か月後に仕事復帰したい』など優先する事柄によってアプローチが異なります。個人の価値観を伝えれば、医師は提案しやすくなります。

 薬も同様で、薬代の負担が大きくて減らしたいのならば、『1日3回のいまの薬は私の生活だと支払うのが難しい』と伝えるのがいいでしょう」(尾藤さん)

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
【薬物検査どころじゃなかった】広末涼子容疑者「体を丸めて会話拒む」「指示に従わず暴れ…」取り調べ室の中の異様な光景 現在は落ち着き、いよいよ検査可能な状態に
NEWSポストセブン
運転中の広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
《広末涼子の男性同乗者》事故を起こしたジープは“自称マネージャー”のクルマだった「独立直後から彼女を支える関係」
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
《病院の中をウロウロ…挙動不審》広末涼子容疑者、逮捕前に「薬コンプリート!」「あーー逃げたい」など体調不良を吐露していた苦悩…看護師の左足を蹴る
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(写真は2023年12月)と事故現場
《広末涼子が逮捕》「グシャグシャの黒いジープが…」トラック追突事故の目撃者が証言した「緊迫の事故現場」、事故直後の不審な動き“立ったり座ったりはみ出しそうになったり”
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者(2023年12月撮影)
【広末涼子容疑者が追突事故】「フワーッと交差点に入る」関係者が語った“危なっかしい運転”《15年前にも「追突」の事故歴》
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン