そもそも誤嚥性肺炎とはどんな病気なのか。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師が解説する。
「健康な人であれば、唾や食べ物を飲み込むとき、気管や肺のほうに入らないようのどの所で蓋をする嚥下のしくみになっています。しかし、加齢によってのど周りの筋肉の働きが衰えたり、脳梗塞や神経筋疾患などで神経に損傷があったりすると、嚥下機能が弱まり、誤って食べ物や飲み物、唾液などと一緒に口の中の菌が肺に入り炎症を起こす。これが誤嚥性肺炎です。
通常は多少異物が肺に入っても咳反射や免疫機能が働いて大丈夫なのですが、そういった身体の機能が衰えている人がコロナ禍で増えている。高齢の方に多い病気ですが、のどの衰えは早い人だと30~40代から始まっていると言われています」
誤嚥性肺炎で亡くなったYMOの高橋幸宏さんの場合は、脳腫瘍手術後のリハビリ中に誤嚥性肺炎を発症したが、実はコロナ流行が始まって以降、誤嚥性肺炎は増加し続けている。
2021年の死亡数4万9489人は、前年より6743人の増加で、コロナ前の2018年と比較すると1万1027人も増加しているのだ。
「高齢者にはもともと嚥下機能が弱い人が多いので、コロナ感染による体力低下がからむと発症リスクが跳ね上がる」(井上医師)
※週刊ポスト2023年2月3日号