大相撲初場所は激しい相撲の連続で、休場者が相次ぐ事態となった。大関候補の豊昇龍は9日目の若元春戦で敗れて6勝3敗となった取組で左足首を捻挫。10日目を休場したが、11日目から再出場。8勝7敗と勝ち越して関脇に残った。昨年11月場所の11勝が起点となって3月場所での大関昇進に可能性が残った。相撲担当記者はこう言う。
「大関候補の高安も5日目の琴ノ若戦で膝を痛めて6日目から休場した。同じく6日目から休場した隠岐の海は、翌場所が13年ぶりの十両転落となるということで、翌日に引退を表明している。横綱・照ノ富士、平幕・栃ノ心も休場。ガチンコ相撲では力士たちが土俵下に落ちるまで勝負を諦めないためケガと背中合わせの土俵となる。
理事長部屋の隠岐の海は現役時代に『君ヶ濱』の年寄株を取得していた。2021年3月場所後に引退した元関脇・琴勇輝は、隠岐の海からの借り株で『君ヶ濱』を襲名していたが、隠岐の海の引退が近いため、昨年10月に『北陣』に名跡を交換している。北陣は現役力士の遠藤の名跡で、借り株を乗り換えたかたちです」
1月4日には「井筒」を襲名していた元関脇・豊ノ島が相撲協会を退職。「借り株だった『井筒』の借り入れ期限がきたが、次の株が見つからなかった」(同前)とされている。親方として協会に残るには105しかない年寄株の取得が必要で、椅子取りゲームは熾烈だ。「元・琴勇輝はうまく乗り換えられたが、『北陣』を所有するガチンコ力士の遠藤もかつて右上腕二頭筋遠位部断裂で引退の危機があったように、常にケガと背中合わせ。元・琴勇輝にとっては綱渡りの親方生活が続く」(同前)という状態だ。
ある若手親方は有力力士でも年寄株の手当てままならない状況に危機感を募らせる。
「現役力士で年寄株を取得しているのは遠藤(北陣)や阿武咲(音羽山)など数人。高安や北勝富士などはすでに手当ができているといわれるが、ほとんどの現役力士は年寄株の目処が立っていない。
押し相撲の貴景勝が横綱になったとて、ガチンコの相撲では短命横綱になりかねない。元大関・北天佑(元・二十山親方)の次女と結婚しており、かつての二十山部屋の土地・建物があるから部屋を構える準備はできているが、年寄株は手当てできていない。横綱なら現役名で5年間、協会に残れるため、その間に年配の親方衆の定年を待つことができるとはいえ、元横綱・白鵬(宮城野親方)ですら年寄株の手配には苦労した。元横綱の鶴竜親方は、陸奥親方(元大関・霧島)の2024年4月の定年まで待っている状態です」