“天使だったけど体重オーバーで地球に落っこちた”をコンセプトに活動する肥満落下系堕天使アイドルユニット「びっくえんじぇる」のメンバーである大橋ミチ子。毎年元日に測定して更新する公式体重は今年、昨年より8キロプラスの117キロを記録したが、もともとは女優を目指し、今の半分以下の54キロの時代もあった。なぜ「おデブアイドル」を志すようになったのか。そこには壮絶な苦悩と自らに課した使命があった。
約10年前、芸能界に興味を持ち、芸能事務所の養成所に通ってダンスや芝居のレッスンを受けていた大橋をいつも待ちかまえていたのは「体重計」だった。
「養成所に入所した時、最初に先生から言われたのが『体重を落とせ』でした。養成所に体重計が置いてあり、行くたびに測られるんです。ダンスの技術を磨けとは言われず、『痩せなさい』と注意される。当時は体重を落とすためにご飯をまったく食べず、水とヨーグルトの生活を半年ぐらい続けたんです。身長は今と同じ167センチでしたが、体重を60キロから54キロまで落としました」(大橋、以下同)
当時は気付かなかったが、「今振り返ると、あの頃は拒食症だった」と分析する。痩せてもご飯を食べることができない日々が続いた。
「ところが、ある日、養成所に行く途中にコンビニの前を通りかかると、たまたまドアが開いていて揚げ物の匂いがふわっとしたんですよ。気付いたら肉まんを食べていました(笑)。揚げ物の匂いがして肉まんを食べているのがちょっとおかしいんですけど、半年ぶりのちゃんとしたご飯が肉まんだったんです。泣きながら2個ぱくぱく食べ、“このままでは自分が壊れてしまう”と思い、養成所を辞めることを決断しました」
だが、試練は続いた。
「ダイエットは止めましたが、当時はまだ、太っている自分はダメなんだ、痩せてなきゃいけないんだと思いがあり、自分自身をなかなか受け入れることができませんでした。反動で過食を繰り返す辛い時期が続き、体重は半年で約80キロに増えました。どうしてこんなに体型のことで悩んでいるんだろう、辛いところから抜け出したい。そうもがいている時に書店でたまたま出合ったのが、今も専属モデルを務めている、ぽっちゃり女子向けファッション雑誌『la farfa』でした」
誌面には、体型を隠さずにおしゃれを楽しむぽっちゃり女子たちが載っていた。水着姿でポジティブに堂々と写っている女性にも目を奪われた。今まで辛かったのは何だったんだろうと衝撃を受けたという。
「もし自分がこの体型を受け入れるようになったら、人生楽しくなるのかなと思ったのが、おデブアイドルになる第一歩でした。すぐ『la farfa』のモデルに応募し、合格しましたが、そこから私自身の考え方がすごく変わりましたね。この体型も含めて自分を愛していこうと前向きになったのです」