続けて今井医師は、マスクと口内環境の問題にも触れる。
「誤嚥性肺炎は口内の細菌が肺に入ることで生じるので、口の中をきれいに保つことが大事です。が、マスク生活で無意識に口呼吸する人が増えて口の中が乾き、唾液の分泌量が少なくなると、自浄作用が働かず口内の細菌が増えてしまう。
またマスクをしたたまのコミュニケーションが増え、顔の表情筋を使う機会が減りました。それに連動して、口周りやのどの筋肉も衰えていきます」
さらにコロナを恐れて歯科検診を避け、口腔ケアが疎かになっていることも原因のひとつになっているという。気づかないうちに歯周病が進行し、繁殖した細菌が寝ている間に肺に入ってしまうケースもある。
誤嚥性肺炎が恐ろしいのは、一度罹患すると体力が低下し、負のスパイラルに陥ってしまう点だ。谷本医師が説明する。
「誤嚥性肺炎で入院すると、絶食し点滴で栄養をとる形になります。入院中はベッドで寝続けて筋力も落ちるので、一度炎症が治まっても再度誤嚥してしまうリスクは高まる。肺炎を繰り返すうちにダメージが蓄積される“泥沼”にはまり、亡くなるパターンは珍しくありません」
厚労省の統計によれば、誤嚥性肺炎は死因全体の6位にランクインする。一度発症すると、生存に直結する大きなダメージを受けるのだ。
※週刊ポスト2023年2月3日号