伝説のテクノバンド・YMOのドラマーである高橋幸宏さんが1月11日、誤嚥性肺炎で亡くなった(享年70)。厚生労働省の人口動態統計によれば、2021年の誤嚥性肺炎による死亡数は4万9489人である。2021年のコロナによる死亡者数は1万6766人なので、誤嚥性肺炎による死亡は、実はコロナ死よりも多い。
そもそも誤嚥性肺炎とはどんな病気なのか。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師が解説する。
「健康な人であれば、唾や食べ物を飲み込むとき、気管や肺のほうに入らないようのどの所で蓋をする嚥下のしくみになっています。しかし、加齢によってのど周りの筋肉の働きが衰えたり、脳梗塞や神経筋疾患などで神経に損傷があったりすると、嚥下機能が弱まり、誤って食べ物や飲み物、唾液などと一緒に口の中の菌が肺に入り炎症を起こす。これが誤嚥性肺炎です。
通常は多少異物が肺に入っても咳反射や免疫機能が働いて大丈夫なのですが、そういった身体の機能が衰えている人がコロナ禍で増えている。高齢の方に多い病気ですが、のどの衰えは早い人だと30~40代から始まっていると言われています」
30秒でうがいができるか
では、誤嚥性肺炎の罹患を防ぐために何をすればいいのか。まずは自身の嚥下力をセルフチェックしよう。みらいクリニック院長の今井一彰医師は「反復唾液嚥下テスト」を奨める。
「30秒間で唾を3回飲み込めるかどうか試してみる。3回できないと、嚥下機能がかなり衰えているといえる。
上を向いてのガラガラうがいを連続して30秒できるか、というテストもあります。これは唾液を飲み込むテストよりものどの力がいる動作なので、より嚥下機能を計る目安になります」
このテストをクリアできないようなら、嚥下機能を鍛えるトレーニングを始めたい。
今井医師が推奨しているのが、「あいうべ体操」。これは口内を乾燥させる口呼吸を、鼻呼吸に改善していくための体操だ。
【1】「あー」と口を大きく開く
【2】「いー」と口を大きく横に広げる
【3】「うー」と口を強く前に突き出す
【4】「ベー」と舌を突き出して下に伸ばす
という4つの動作を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続ける。