真冬と真夏になると「電力需給ひっ迫注意報/警報」が資源エネルギー庁から発令されるようになってしばらくになる。電気が足りなくてブラックアウトするようなことにならないよう節電に協力を、という呼びかけもお馴染みとなった。そして今は、使用量を減らしても請求された光熱費が高くなったと悩む人ばかりだ。俳人で著作家の日野百草氏が、電気やガス料金の高騰によって人生設計の立て直しも考え始めた人たちについてレポートする。
* * *
「三世代で住んでますけど電気代、ついに月12万円を超えました。オール電化といってもここまで高くなったことはないです。もう恐怖です。さっそく家族会議ですよ」
宮城県に住む40代の会社員男性、妻と小学生の一人息子、そして70代両親の三世代同居だが、1月の電気代の請求書は衝撃であり「恐怖」だったと話す。
「それまでも去年、冬に入るころから電気代がどんどん高くなって、親からは『何に使ってるんだ』ってどやされてました。昔の人からすれば電気代が12万円なんて考えられないでしょうからね、説明はしましたが、まだ納得してないみたいです」
ロシアのウクライナ侵攻と資源の奪い合い、落ち着きを見せているとはいえいまだに影響を残す円安、そして多くの原発がいまも停止中とあって、エネルギー自給率12.1%(資源エネルギー庁・2019年度)の日本は空前の電力高を迎えようとしている。多くの家庭で電気代の高騰、とくに2023年1月の請求額に驚いただろう。
「両親は『エアコンは暖まらない』とオール電化なのに灯油も併用していてこれですから、光熱費、と考えるともっと高いということになります」
北海道に比べればマシかもしれないが、宮城県も12月~1月の平均気温は4度ほど(仙台市・2022年~2023年)、夜には氷点下になる。
「我慢といっても限界はありますからね、これでもいろいろ節約しているのですが、家族が多いと難しいですね。物価も税金も上がってますから、父はまた働こうかと言ってくれてます。ありがたいですけど申し訳ない気持ちです」
家族が多ければ負担も大きくなるが、それでも働き口のある家族が新たに生活費を入れてくれればなんとかなる。また彼の自宅は父親の退職金で建て替えたため築浅で家賃はかからない。人それぞれの考えだが、やはり住宅ローン負担のある無しは大きい。しかしどうにもならない家庭もある。
岩手県に住む30代の夫婦と小学生の子ども2人の4人家族の場合はさらに深刻だ。
「賃貸ですが、うちはプロパンガス(LPガス)なんです。電気代も高いですが、プロパンはもっと高い、というか話しても理解してもらえないくらい高いです」