ビジネス

小さな大手私鉄「相模鉄道」 JR線につづき東急とも直通開始で次の狙いは?

2019年3月28日に相模鉄道とJR東日本の接続駅「羽沢横浜国大駅」でレール締結式が行われた同駅からJR東海道貨物線に乗り入れ、都心まで直通運転する。開業は同年11月30日(時事通信フォト)

2019年3月28日に相模鉄道とJR東日本の接続駅「羽沢横浜国大駅」でレール締結式が行われた同駅からJR東海道貨物線に乗り入れ、都心まで直通運転する。開業は同年11月30日(時事通信フォト)

 小さな大手私鉄「相模鉄道」(相鉄)が、JRへの乗り入れに続き、3月に東急へも直通運転を始める。それにあわせて相鉄が描く沿線の、そして相鉄という鉄道会社の未来について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 神奈川県を地盤とする相模鉄道(相鉄)は、横浜駅―海老名駅間を結ぶ相鉄本線と途中の二俣川駅から分岐して湘南台駅までを結ぶ、いずみ野線の2路線を有する。

 2023年3月、相鉄は新たに相鉄本線の西谷(にしや)駅から分岐して新横浜駅まで走る新横浜線を開業させる。新横浜駅から先は東急新横浜線へと乗り入れ、東急東横線の日吉駅を経て渋谷駅へと至る。相鉄は同線の開業を盛んに宣伝し、神奈川県民や鉄道ファンのみならず、多くの人の注目を集めている。

 現在の相鉄は業界団体によって大手私鉄と認定されているが、一般的な大手のイメージと異なり、神奈川県内にしか自社路線を有していない。長らく他社線との乗り入れもなく、ゆえに相鉄の車両を他県で目にすることはなかった。相鉄に大きな変化が訪れるのは、2019年11月に相鉄本線の西谷駅から分岐する相鉄・JR直通線が開業してからだ。

 同線は羽沢横浜国大駅からJR線へと乗り入れ、武蔵小杉駅・大崎駅・渋谷駅・新宿駅など、相鉄の車両が東京のど真ん中を走るようになった。さらに2023年春に東急との直通運転を開始する。これで相鉄は東急・JRどちらにも乗り入れ、これまで以上に相鉄の車両を都内で見る機会が増える。

 この相互乗り入れによって路線が複雑化するものの、JRと東急という2つの直通線によって相鉄は神奈川の一私鉄という枠には収まらなくなる。そして、これを機に相鉄も新たなサービスを開始する。それが、「YOKOHAMA どっちも定期」だ。

「東急直通線が開業する2023年3月18日から、相鉄はIC通勤定期乗車券の新サービス『YOKOHAMA どっちも定期』を始めます。これは、西谷駅―新横浜駅間を含む通勤定期券をお持ちの利用者は、追加運賃なしで定期の区間外にある横浜駅でも乗降できるサービスです」と説明するのは相模鉄道総務部の報道担当者だ。

 東急直通線の開業により、相鉄沿線から東京への所要時間が短縮される。相鉄沿線に在住し、東京へ通勤している人は通勤経路を東急直通線もしくはJR直通線へと切り替えるだろう。そうなると、相鉄本線の西谷駅―横浜駅間は利用者が激減することが想定される。「YOKOHAMA どっちも定期」は、途中駅からの乗降に追加運賃が発生するものの、横浜駅での乗降には追加運賃が生じない。これは、横浜駅の利用者をつなぎとめようとする狙いが含まれている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン