学歴競争を勝ち抜くためには、中学受験をするべきなのか、あるいは高校受験が得なのか。幸運にも子供が勉強ができた場合、正解は東大より医学部なのか。藤沢数希さんの『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)は、学歴獲得の「コスパ」を追求すると同時に、中学から大学院までの受験制度や教育内容を俯瞰し、親と子が戦略的に取り得る選択肢を示す。受験シーズン突入にあたり、国内外の教育事情に詳しい藤沢さんに話を伺った。【後編】では、医学部人気の光と影、多様化する入試制度など、大学受験の現在地についてお届けする。
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平均年収は東大卒700万、勤務医1400万「医者になっておいたほうが得」は本当?
──現在の大学受験において、その後の人生に大きなインパクトをもたらす選択は、「医学部に行くかどうか」だと指摘されています。近年、医者人気によって、医学部の偏差値はますます上昇していると。
年収の高さや社会的地位、また、職業の安定性という点からいうと、日本では医者になるのが得だからです。日本のサラリーマンの平均年収は、卒業大学の偏差値が高いほど高くなる傾向がありますが、その頂点の東大卒であっても平均すると700万円程度です。
一方、厚生労働省のデータによると、勤務医の平均年収は1400万円程度と約2倍です。もちろんサラリーマンでも優良な大企業である程度出世すれば、勤務医の給料をうらやましいと思わないくらい稼げますが、それができるのはごく一部です。勉強のできる高校生が、医者になっておいたほうが得と考えることはとても自然なことでしょう。
もちろん、日本経済全体としては、理系の最優秀層が、こうして老人医療の現場にどんどん吸い込まれていくわけで、研究開発が必要なメーカーなどの国際競争力が落ちている一因になっているとは思いますが、そんなことは受験生やその家族が考えるべきことではありません。また、医療に優秀な人材を配置して、医療を手厚くしたい、というのは民主主義の日本にあって、民意でもあるわけですから、尊重されなければいけません。