「闇バイト」で稼げる、そんなうまい話はある訳がない。でも、飛びついてしまう、行き場のない迷い子たちが溢れている。ネット画面の怪しいサイトが臆面もなく呼びかけてくる。「簡単に稼げます」「自宅で気軽にできる副業」…。こんな見え透いた甘言に釣られる愚か者が数多いるから、世界中で詐欺が横行する。
「荷受け代行」をうたう怪しいアルバイトもある。「楽して稼げる」という誘い文句につられてアルバイトに応募すると、自宅に届いた携帯電話を預かって、指示された処に送り返すだけで、3000円程度の小遣いをもらえる。だが、自分名義の携帯電話に変えられて詐欺などに悪用され、300万円も騙し取られた人もいたとか。コロナ禍で被害が一気に何十倍にもふくれ上がった。これも知らないうちに犯罪にかかわり、自らも詐欺の被害者になってしまう「闇バイト」の一つだ。
ついに、「強盗バイト」は殺人事件に及んでしまった。「奈落で稼げるサイト」もそのうち大事件を呼んでしまいそうだ。ほんとに情けない世の中だ。
日本ほど豊かだといわれながら、こんなに不幸な国はないだろう。失われた30年を引きずって野良をうろつく若者たちがゾンビに見えて、哀れでならない。
◆文責・井筒和幸
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校時中から映画製作を始める。1975年にピンク映画で監督デビューし、『岸和田少年愚連隊』(1996年)と『パッチギ!』(2004年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。その後も 『黄金を抱いて翔べ』(2012年)、『無頼』(2020年)など、さまざまな社会派エンターテインメント作品を作り続けている。コラムニスト、テレビのコメンテーターとしても活躍中。