昨年末、保育士による保育園児への虐待や不適切保育が相次いで発覚したが、こうした事案は他でも起きている。東京・世田谷区の私立の認可保育園で、園児への虐待行為があったことが、保護者、保育園、行政側への取材で明らかになった。問題となったのは「ナオミ保育園分園ぶどうの木」(以下・ぶどうの木)という施設。ナオミ保育園は世田谷区を中心にいくつもの保育園を運営する有名保育園グループである。「ぶどうの木」は世田谷区の高級住宅街に位置する保育園だ。
同園に子どもを通わせている保護者がこう証言する。
「Xさんという保育士さんが、園児に対して密室に閉じ込めたり、給食を与えない、手を捻り上げる、コット(幼児用ベッド)をひっくり返す、などの虐待行為を行なっていたのです。園児のなかにはあまりに叱責されるので『僕は地獄に落ちる』と保育園を怖がる子もいるそうです。ところが、園側の対応は事件を矮小化しようとしているように感じられ、保護者の間で不信感が募っているのです」
昨年末、静岡県裾野市にある「さくら保育園」で発覚した保育士による園児虐待問題では保育士3人が園児への暴行容疑で逮捕(後に処分保留で釈放)される事態にまで発展し、世間の大きな注目を集めた。裾野市は「逆さづりにする」「カッターナイフを見せて脅す」など、3保育士による16種類の不適切行為があることなどを公表した。こうした「さくら保育園」問題と同時期に起きていたのが「ぶどうの木」のトラブルだった。
筆者は「ぶどうの木」の虐待問題についてのいくつかの内部文書を入手した。11月に保護者からの苦情が出て虐待問題が発覚してから、およそ1か月たった12月16日。園側からは〈ナオミ保育園分園ぶどうの木における不適切保育(虐待)に関するお詫びと今後の対応について〉という文書が保護者宛てに出されている。