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競馬の基礎負担重量1キロ引き上げに蛯名正義氏「馬にとってマイナスにならないことを願う」

基礎負担重量の引き上げがどう影響するか

基礎負担重量の引き上げがどう影響するか

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動している。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、基礎負担重量引き上げについてお届けする。

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 熱心に馬券検討をするファンならば、出馬表を見て今年の競馬が少し変わったことにお気づきでしょう。たとえば1月15日の小倉11レースのオープン特別。ダート1700mで行なわれた門司ステークスに出走した2頭の負担重量が60キロでした。障害レースでは60キロ以上を背負うことは珍しくありませんが、平地レースでは久しぶりのこと。その他のレースでも「なんだか去年より重いのではないか」と思われていませんか?

 出走表で騎手名の横に書いてあるのが、騎手の体重と勝負服や鞍などの合計重量。「負担重量」というぐらいで、馬が負けた時、調教師が「58キロは厳しかった」とその原因にあげたりするので、軽い方がレースで有利なことは間違いありません。かつて斤量が重くなると力を出せないことを「カンカン負け」などとも言ったものです。

 騎手にとって体重の管理はもっとも大事なこと。競馬学校に入学した日から毎日体重を量ることが日課です。競馬に乗るときに馬が背負う重量はだいたい50キロ台ですが、それに適する体重を維持しなければ騎手として失格だし、騎乗依頼も減ります。若手騎手は、特典としてさらに軽い斤量が許されているので、それに合わせた調整が必要です。伸び盛りのアスリートではありながら、体力をつけるためにモリモリ食べることは許されません。節制をしていても体が成長してしまうことはあり、そのため挫折した騎手もいます。

 そんなこともあって「騎手の健康と福祉、および将来にわたる騎手の優秀な人材確保の観点から」──平たく言えば、過度の減量によって騎手が健康を損なうことを防ぐために、JRAが今年からレースに乗るときの基礎負担重量を1キロ引き上げました。合わせて、ハンデ戦も重くなっています。

 人間の体が時代と共に大きくなっているのに、競馬に乗るときの斤量がずっと昔のままでいいのだろうかという議論が世界的にあって、いくつかの国で改定されてきたのですが、日本もそれに従ったというわけです。

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