NHK大河『どうする家康』で、服部半蔵を支える忍者・女大鼠を演じる松本まりか。女大鼠は、父・大鼠が束ねた忍者集団のトップを継いだ“エリートくのいち”で、町娘から遊女、武士まで七変化を遂げる変装の達人でもある。そんな女大鼠の役作りの過程で意識したことについて、松本に話を聞いた。
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女大鼠はひっそりと身を潜める忍者なので基本的に口数が少ないのですが、そもそも感情が“無“というか、一切ぶれない。それほどまで彼女が研ぎ澄まされているのは、生きる手段として忍びをしていたからだと思います。
忍者集団といっても普段はみんな貧しい農民なんです。命を繋ぐことが困難な時代、農民たちは生き延びるために技術を磨いて、半蔵の命令を忠実に遂行している。大事なのはいま食べるもの、眠る場所であって、余計な思考が挟まる余地なんてありません。
家康の家臣団として忍びをしていても、農民が行動するのは自分の義はどこにあるだとか、国を良くするための大義だとか、そういう理屈じゃない。頂点に君臨する家康をフォーカスする傍ら、対極にいる忍者の生き様を見せることで当時の農民の生活がどうだったかを匂わせる。その役割を忍者集団が担っています。
彼女は技術も卓越したデキる忍びでありながら、頭のてっぺんで髪がくるんと丸まっていてかわいいんですよ。ねずみの耳をイメージしていて幼さがありますが、サイドの前髪をぱつんとシャープに切ることでエリート感も醸し出し、そのちょっとした違和感が女大鼠をより謎めかせます。
『どうする家康』には他の現場では出会ったことのない「人物デザイン監修」として、柘植伊佐夫さんが登場人物の髪型や服装を総合的にプロデュースしてくださっているんです。農民たちの衣装までも、つぎはぎの布の色合いまで綿密に練って貧しさをリアルに見せつける。発想が刺激的で扮装するだけで役へスッと入れます。
くのいちの七変化でも柘植さんのセンスが炸裂しているので、暗闇に潜む女大鼠をどうかお見逃しなく。
【プロフィール】
松本まりか(まつもと・まりか)/1984年9月12日生まれ、東京都出身。2000年に『六番目の小夜子』(NHK)でデビュー。「憑依型俳優」と称される。2月25日より舞台ナイロン100℃ 48th SESSION『Don’t freak out』の公演を控える。
取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2023年2月10・17日号