NHK大河『どうする家康』で、乃木坂46のメンバーとして初の大河レギュラーを射止めた久保史緒里は、幼くして家康嫡男の信康に嫁いだ信長の娘・五徳を演じる。歴史好きな父親の影響で幼い頃から戦国の歴史に親しんできた久保。そんな彼女が考える五徳像とは──。話を聞いた。
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五徳は織田家でありながら徳川家へ嫁ぐ、複雑な立場です。信長の娘として誇り高くあらねばと常に気を張りつつ、徳川家で新たな家族の存在に触れて、その優しさに自分もなじんでいきたいと心が揺れ動く。
今回の五徳は周囲の影響で気持ちがどんどん動いていきます。信長の娘のプライドが作り上げた“仮面“がいつどのタイミングで剥がれるのか、はたまた剥がれないのか。撮影はこれからですが、私自身も家族のような大河のチームへ入れていただきながら、五徳の心情に丁寧に寄り添っていきたいです。
思うに五徳は感情が揺れても甘えたり、素直に本心を見せたりすることが立場上、簡単ではなかったのでしょう。でも、それができていたら何かが違っていたかもしれない。私も乃木坂の同期や先輩には甘えてしまいますが、後輩には先輩の凜とした姿を見せようと格好つけちゃうので、五徳も嫁ぎ先で気負いがあったのかなと察しています。
五徳が夫の信康と姑の築山殿の悪行を書き連ねて父・信長の元へ訴状を送るくだりは、五徳にとって最大の山場となります。訴状については諸説あり、五徳がどう立ち振る舞うか想像を膨らませて台本をめくりましたが、脚本の古沢(良太)さんの解釈は「新しい!」と驚きがありました。史実を踏まえて『どうする家康』ならではの五徳をお見せすることができると思います。
家康公にとっても重要な鍵を握る人物となる五徳を私が演じると知って、歴史好きな父は大喜びしながらも「すごい役をいただいたね」と、しみじみ話していました。私自身も覚悟を決めた瞬間だったので、配役が発表された時にはすごく泣きました。家にいたのでひとり、しとしとと……。
こういう涙を流せる機会は人生でもそうないと思うので、幸せな涙でした。気持ちを敏感に揺れ動かしながら、誠実に、五徳を生き抜きたいと思います。
【プロフィール】
久保史緒里(くぼ・しおり)/2001年7月14日生まれ、宮城県出身。『乃木坂46』3期生として2016年にデビュー。舞台『夜は短し歩けよ乙女』(2021年)や映画『左様なら今晩は』(2021年)、『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』(今夏公開予定)などに出演。
取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2023年2月10・17日号