スギ花粉の飛散量が過去10年で最大になると言われている今年の春。花粉症薬が手放せないという人も多いだろう。のみ薬以外にも、「レーザー手術」「抗IgE抗体療法」「舌下免疫療法」「テープ療法」など、花粉症の治療法はいくつかある。ナビタスクリニックの理事長で医師の久住英二さんによると、これらの治療法は、軽い気持ちでやるものではないと話す。
「耳鼻科医などで行っているレーザー手術は、鼻水が出る表面の粘膜の細胞を焼く手術ですが、完治するわけではない。時間が経てば花粉症の症状が現れ、再び手術が必要になります」
では、花粉症のアレルギー反応を引き起こす「IgE抗体」を肥満細胞に結合しないようにブロックし、ヒスタミンなどを放出させなくする「抗IgE抗体療法」についてはどうか。これは2020年より、重症のスギ花粉症患者に対して認可された最新の治療法だ。日本初の「薬やめる科」を開設した松田医院和漢堂院長の松田史彦さんはいう。
「そもそも抗体は必要だからこそ人体に存在しているのに、それをブロックしてしまえというのは乱暴な考えです。最重症の花粉症の人はやむをえない部分はあるでしょうが、継続的に使用するのは危険ではないかと思う。鼻水は止まるでしょうが、それ以外に体に何が起きるかわかりません。新薬は何年か経ってから想定外の副作用が出る場合もある。過去にそういったケースは何度もありました。
鼻炎に効く薬剤を皮膚から取り入れる『テープ療法』は注射よりマイルドかもしれないが、治療が長期にわたるだけに危険性を否定できないものだと思います」(松田さん)
かつてディーン・フジオカ(42才)が受けたことを明かした「舌下免疫療法」という治療もある。3~5年にわたりアレルゲンが配合された治療薬を舌の下にしばらく含んでからのみ込んで、毎日少しずつ免疫を作っていくもの。
「これは比較的安全性が確立された方法で、症状がひどく根本的な治療に取り組みたい人にはおすすめできる。ただ、スギとダニにしか対応しておらず、ほかのアレルゲンに対する反応が大きい人はメリットを感じにくい。それなりに効果があると実感できるのが7~8割で、一部の人は効果を感じにくいとされます」(久住さん・以下同)
鼻や喉がムズムズするからと、テレビCMなどで見かける鼻うがいを試した人もいるかもしれないが、これはどうなのだろうか。
「よく、鼻うがいを水道水でやってもいいかという質問を受けますが、水道水は粘膜への刺激が強く、おすすめできません。体液と水道水では浸透圧が違い、しみて肌荒れを起こし、そこから細菌が入って炎症を起こす可能性もある。生理食塩水や、鼻うがい用の薬を買って行ってください。薬局で売っている生理食塩水を37~38℃くらいに温めて洗うのがベストです」
そのほか、鼻にティッシュを詰めたり、強く鼻をかむのもNG。粘膜を傷つけたり、鼻と耳の間にある耳管に細菌が含まれた鼻水が流れ、中耳炎を起こす可能性がある。