『花の生涯』のクライマックス「桜田門外の変」は、『大河ドラマが生まれた日』のクライマックスでもあった。ダイナミックなシーンを撮るため、山岡は映画の本丸、京都太秦の「東映城」のセットを借り受けたいと頼み込む。なんとか壁を突破し、映画とテレビのスタッフが一丸となって門の瓦に白いペンキを塗り、巨大な白い布を地面に敷き詰め、「雪の桜田門外」を作り出す行程は、痛快だ。この熱がなかったら、大河ドラマは続いていなかったのかもとも思う。
ドラマのラスト。にこりともしない局長は、山岡に「『花の生涯』をはるかに超える超大型時代劇を作ってくれ」と言い放つ。
この言葉を受けて翌年、初の通年放送となった大河ドラマ第二弾が『赤穂浪士』だ。主役の大石内蔵助を演じたのは長谷川一夫。その美しい顔がスクリーンに大写しになると客席からどよめきがおこったという“天下の二枚目”“銀幕のスター”を毎週、画面で観られるというだけでも大騒ぎだったが、加えて、当時、歌謡界のトップアイドルだった舟木一夫も出演。大いに話題になった。出演者が豪華ゆえに、最終回の討ち入りでは、ひとりひとり見せ場を作るため、撮影は長時間、三日以上かかったと聞く。
『大河ドラマが生まれた日』には、深夜、スタッフが局の近くのおでん屋に立ち寄る場面が出てきたが、実際、『赤穂浪士』の関係者もしばしば屋台で一息入れていたという。大河ドラマ制作に走り回ったスタッフ、期待に応え続けたキャストの続編を観てみたい。