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江戸時代の長生き指南書『養生訓』を86歳現役医師が説く「最も大切なのは“心のときめき”」

22歳年下の妻と趣味や旅行を楽しむなど、晩年まで夫婦仲が良好だったと伝わる貝原益軒(国立国会図書館蔵)

22歳年下の妻と趣味や旅行を楽しむなど、晩年まで夫婦仲が良好だったと伝わる貝原益軒(国立国会図書館蔵)

 儒学者であり、医学者の貝原益軒が自らの経験に基づき心身の養生法を説いたのが全8巻の『養生訓』だ。発表されたのは1713(正徳3)年で、益軒の最晩年にあたる84歳の頃。人が健康を保ち、幸福で長生きをするための指南書として、今日まで長く読み継がれている。

「『養生訓』の底流を流れる思想は、『人生の幸せは後半にあり』です。一説には江戸時代の平均余命は40歳。つまり、益軒のいう人生の後半とは、50歳以降を指しています」

 日本におけるホリスティック医療の第一人者で、帯津三敬病院の名誉院長である帯津良一氏によれば、益軒のいう50歳以降は、現代人に置き換えれば70代、80代にあたる。平均寿命の倍を生きた貝原益軒の養生法には、現代を生きる我々にも通じる、多くの長寿のヒントが隠されている。

 帯津氏は、『養生訓』が江戸時代のベストセラーとなった最大の理由は、性を取り上げたことにあるという。

「養生書でセックスについて触れたのは、益軒が初めてだと思います」

『養生訓』では、繰り返し「色欲を慎む」ことが述べられている。性交で射精しすぎると命が短くなる、という。20代の者は4日に1回、40代は16日に1回、60歳は射精せず、体力があるなら1月に1回、などと具体的な数字を挙げて説くが、帯津氏によれば鵜呑みにすることはないという。

「この回数は、中国の古書『千金方』を参考にしたものです。益軒のいう60歳は今の80歳くらいと考えれば、妥当な数字です。一方で、『我慢すればかえって害がある』とも述べています。気持ちが高ぶり性交におよぶのなら、何歳だろうと射精していいと思います」

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