難聴が進行すると周囲との会話が減り、放置すれば認知症リスクが激増するという報告もある。そんな難聴に長年悩まされながら、補聴器をつけたら人生がガラリと変わったと明かすのが梅澤富美男(72)である。今の補聴器はどのような性能なのか。その最新事情をお伝えする。【前後編の後編。前編から読む】
超高齢社会の到来で耳の悩みを抱える人は増え続けているが、一度衰えた聴力は回復しないという。川越耳科学クリニック院長の坂田英明氏が語る。
「音を脳に伝える内耳の器官『蝸牛(かぎゅう)』は加齢とともに劣化し、再生することはありません。衰えた聴力を補うのは補聴器を利用するしかない」
医学誌『ランセット』は2017年、アルツハイマー型認知症の要因は6割が年齢や遺伝子で、残りの4割のなかで最大のリスクとなるのが難聴だと結論づけた。
「逆に言えば、難聴に対処することで認知症を積極的に予防できることも意味しています。補聴器は認知症予防の観点でも極めて有用です」(坂田氏)
補聴器は安ければ2万円程度で入手できるものもあるが、相場は15万円ほど。高価だが医療費控除を受けることもできる。
「補聴器選びの理想は、補聴器相談医の資格を持った耳鼻科医に相談すること。補聴器が必要であることを証明してもらえれば、控除を受けることも可能です」(同前)
近年の補聴器は梅沢の使用する耳かけ型や耳穴型以外にも骨伝導で音を伝える「メガネ型」など種類も豊富だ。
耳かけ型は操作が簡単で扱いやすいのが特長で、耳穴型は目立ちにくく、小指の先端ほどの極小タイプは正面からも横からもほとんど見えない。メガネ型は外耳道閉鎖症や小耳症など、従来の補聴器が着用できない人でも使用できる利点がある。
「昔の補聴器だと周囲の音を聞こえやすくするだけでしたが、AIの進歩で1m以内の音を増幅し、それ以外は耳に入れないことも可能に。大きな音が鳴った時に耳を守るため、その音を消すノイズキャンセリングが搭載されている製品もあります。
機能が良ければいいわけではなく、自分の耳に合うかが重要。最低1か月は貸出期間のあるところで試してください。補聴器は入浴と就寝時以外はつけて過ごすので、汗などの湿気で詰まりやすく、お手入れも大切。乾燥剤入りのケースに入れて保管しましょう」(同前)