桑田真澄、清原和博ら数多くのプロ野球選手を輩出した高校野球の超名門として知られるPL学園。硬式野球部は2016年夏に休部となり、復活を願う声は多いが、その道のりが果てしなく険しいであろう新事実が明らかになった。『永遠のPL学園』(小学館文庫)などの著書があるノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。【前後編の前編。後編を読む】
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春夏あわせて7度の甲子園制覇を誇り、「永遠の学園」と校歌に謳われたPL学園(大阪府富田林市)の灯が消えようとしている。
2月10日に行われた2023年度の入試の日、近鉄喜志駅から徒歩15分の同校は人の出入りがまるでなく、校門脇の警備員室の担当者が直立しているだけだった。「試験会場」の立て看板もなく、高校進学に胸を昂ぶらせた中学生の姿はない。
大阪私立中学校高等学校連合会が公表した入試出願状況によると、今年のPL学園の国公立コースの競争倍率は0倍――つまり、ひとりの受験者もいなかった。
もうひとつの理文選修コースも、89人の外部募集に対し、専願3人、併願4人の志願者しかおらず、競争倍率は0.08倍だ。ちなみに、前年度の受験者も国公立コースが1人、理文選修が2人という窮状だった。
もちろん、系列のPL学園中学からの内部進学者はいる。それでも現在のPL学園高校の生徒は3年生40人、2年生20人、1年生15人で、3学年あわせても75人しかいない。中学校も3年生27人、2年生9人、1年生7人の43人。中高共に、学年が下がるごとに目減りしており、高校も数年後には一学年に一桁の生徒しかいない時代を迎えるかもしれない。
生徒減少に歯止めをきかせられないPL学園に対し、大阪の私立高校を管轄する大阪府教育庁の私学課から何かしらの「指導」が入ることはあるのだろうか。私学課の担当者はこう説明する。
「PL学園に限らず、大阪府の私立学校さんとは、適切に教育をしていただけるよう常に会話はしています。私立学校は建学の精神に基づいて学校運営を自主的にやっていただくことが求められる組織です。生徒数が極端に減っているからといって、私学課から何かしらの指導をするようなことは基本的にはありません。ただ、(税金から支払われる)助成金に関しては、概ね生徒数に応じて金額が決まるので、他の学校と比べれば少ないかと思われます」
PL学園は宗教法人パーフェクトリバティー教団を母体とする学校だ。KKコンビ(桑田真澄、清原和博)が5季連続で甲子園に出場し、立浪和義らが春夏連覇を達成した1980年代の黄金期には、定時制の生徒を含め1000人以上の生徒が敷地内の寮で共同生活を送るマンモス校だった。