春夏通算7度の甲子園制覇を誇るPL学園。超名門として知られた硬式野球部は2016年夏に休部となり、その後、学園の生徒数は減少を続けている。ついに今年の入試では国公立コースで「受験者ゼロ」という事態が明らかになった。学園側はこの状況をどう受け止めているのか――。『永遠のPL学園』(小学館文庫)などの著書があるノンフィクションライター・柳川悠二氏が聞いた。【前後編の後編。前編から読む】
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「受験者ゼロ」について学園に取材を申し込むと、意外な人物が対応した。2016年に硬式野球部が活動休止となった時、監督を務めていた川上祐一氏だったのだ。彼は現在、教頭になっていた。
PL教団幹部の子供たちが暮らす寮の寮長をしていた川上氏はPL学園の剣道部出身で、野球経験はなかった。だが、着慣れぬ野球のユニフォームに袖を通し、学園の母体であるパーフェクトリバティー教団の意向を受け、硬式野球部の事実上の廃部を先導した。
そんな彼が7年の時を経て、生徒数激減の窮地にある学園の教頭を務めているとはなんとも皮肉だ。PLの関係者は総じて、2014年よりPLに関連する問題を追いかけてきた私の取材には口をつぐむ。しかし、2023年度の入試の当日(2月10日)、川上氏は私の単刀直入な質問にも、真摯に応じた。
――近年は国公立コース、理文選修コース共に、大きく定員割れすることが続き、今年はとうとう、国公立コースが「受験者ゼロ」となった。
「学校としては、生徒募集を引き続き頑張っていくしかありません。ここまで落ち込んだ要因はいろいろあると思います。ひとつではない。善処していくしかないと思っています」
――数年後には、高校の一学年の生徒が一桁になるかもしれない。
「危惧はしております。ただ、そうはならないように、全国の教会に協力をいただきながら、ひとりでも多くの受験者を授かるように努力しているところです」
――野球部が活動を休止した2016年以降、受験に際し、「お神霊(みたま)」を持つ生徒しか受験ができないと聞いた。
「はい、そうです。ただ、入試制度に変更があったわけではありません」
――つまり、信仰に熱心な生徒に入学してもらいたいということか。
「それは昔と変わりません」