神奈川県に3つめの新幹線駅を　「倉見新駅」実現に向けた相模鉄道の延伸可能性

　神奈川県の自治体が新幹線の新駅誘致で綱引きをしている間、1988年に静岡県富士市の新富士駅、掛川市の掛川駅、愛知県安城市の三河安城駅が誕生した。こうした状況に、両協議会は焦った。急転直下、相模線との交点となる位置に新幹線新駅を誘致することで意見がまとまった。

「両協議会の意見がまとまったとはいえ、倉見新駅の実現にはクリアしなければならない課題がいくつかあります。まず絶対条件と言えるのが、リニア中央新幹線が大阪まで開業することです。なぜなら、現状の東海道新幹線はダイヤに余裕がありません。そのため、新幹線を増発できないからです」（同）

新駅誘致に向けた相鉄いずみ野線の延伸

　東海道新幹線は東京―大阪間の利用者が大半のため、両都市間を最速で結ぶ“のぞみ”を中心としたダイヤが組まれている。そのため、新幹線駅といっても各駅停車の”こだま”はともかく、およそ1時間に2本ずつ運行されている”ひかり”であっても、政令指定都市の玄関となっている静岡駅や浜松駅に停車する新幹線は全体の半分に満たない。

　仮に神奈川県や協議会に加盟する自治体が念願としている倉見新駅が開設された場合、各駅停車タイプの”こだま”のみの停車駅になるだろう。だが、東海道新幹線が増発できなければ、“こだま”のみの停車駅は物理的に増やせない。しかし、リニアが開業すれば、取り巻く環境は一変する。これまで東京―大阪間を“のぞみ”で移動していた人たちがリニアへと移ることが予想され、それに伴って運行の限度いっぱいで組まれてきた“のぞみ”の本数が減る。

“のぞみ”の運行本数が減れば、“ひかり”と“こだま”の運行本数が増やせる。“こだま”しか停車しないことが予想される倉見新駅を開業させるには、リニアの東京―大阪の開業とセットであることが絶対条件なのだ。

　リニアは静岡県の川勝平太知事の反対もあって、工事が遅れていることをたびたび報じられてきた。神奈川県はほかの県と連携してリニアの早期開業を目指しているが、他方で倉見新駅の開設に漕ぎ着けるまでに神奈川県や周辺自治体が進めてなければならない課題も残っている。

　先述したように倉見新駅は新幹線との乗り換えが考慮されて、周辺自治体は相模線との交わる地点に開設するということで意見が一致した。ところが肝心の相模線は、全区間が単線のために運行本数が少ない。また、単線区間ゆえにのぼり電車とくだり電車は駅で行き違いをしなければならず、対向列車を待つ時間が必要になる。そのため、所要時間は長くなる。